ほんまもん

 
本体価格 1400円+税
発売日 2015/5/15
ページ数 256ページ
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未来を変えるために私がしていること、きみたちにできること

概要
絶望的な医療現場で働く医師が、現状を打破するためにとった意外な行動とは?
本書は、皮膚科医の岸本和裕先生が、臨床の現場で身につけてきた
「知恵」や「心の在り様」を若き医療人たちに向けて語った内容をベースに
先生の医療人としての半生をまとめたものです。

やはり患者さんの笑顔を見ることが一番の幸せです。先生は何人の人たちを救ってきたのでしょう。感激して言葉にできません。
患者さんの思いを大切にする看護師になります。そのために、今を一生懸命、勉強に時間をかけていきたいと思います。
(聴講生の声から)

本書は、福島県会津若松市にある竹田綜合病院の皮膚科長・岸本和裕先生が、若い医療人たちに向けた「人間学」の講義内容をまとめたものです。
著者は皮膚科医として、医療崩壊した福島県の地域医療の現場で孤軍奮闘してきました。孤立無援の状況下で最善の医療を行なうにはどうしたらよいか? 厳しい現状を打破するには何が必要か?
著者が取り入れたのは「人間学」という考え方でした。多くの書物を読み、偉人たちの言動に触れ、そこからたくさんの教えを見出し、実際の医療現場に応用していったのです。それは折れそうになる心を支えてくれる「杖」でもありました。

その実体験に基づく人間学を加味した著者の講義は、医学生や看護学生に感銘を与えました。
「今まで誰も教えてくれなかったことを教わることができた!」と。
彼らが将来に対して漠然と不安に感じていた、「このまま医者になってよいのか?」、あるいは今まで気づきもしなかったことに著者がひとつの方向性を示したのです。「きみたちが進むべき道は、本当はこういうものではありませんか?」と。

医療を志す者は、専門分野の習得に躍起になります。しかし、そうやって身につけた「知識」や「技術」は、患者を治すという目的を実現するための「道具」に過ぎません。結局、どんなに立派な道具を持っていても、それを使う人間が強く真っ直ぐでなければ何の役にも立たない。むしろ間違った結果を招いたり、ケガをしたりする。それは、科学技術がもたらした災禍を見ても明らかじゃないか――
こうした「医療人として本当に大切なことは何か?」というもっとも根本的なことを教えてくれる講義が、じつはこれまでどこでも行なわれてこなかったのです。
そのことが「医療不信」の根底にあるのではないかと、本書を読むとよくわかります。

まずは、医療を志す若者たちに読んでもらいたいというのが著者の願いです。本書を読み、そこに書かれていることを理解してくれれば、医療は必ず変わってくるはずだと。さらに、これは医療だけにとどまらず、働くことの意味、生きる喜びといった万人に共通するテーマも含んでいます。働くことに迷ったり、悩んだりしている若い人たちにも読んでいただきたい一冊です。

◎ 主な内容

本書を読むと、「こんな先生が近くにいてくれたら!」と多くの方が思うはずです。ひとつエピソードをご紹介します。

手術を受ける際、医師から「同意書」を求められた経験のある方は多いと思います。手術で「100%成功」ということはあり得ません。だから、医師は何かあったときのために同意書を取ります。言葉は悪いですが「保険」の意味があるわけです。

ところが、岸本先生はこれまで同意書を取らずに手術を行なってきました。なぜか?

仮に同意書を取っても、医師と患者の間に信頼関係が築かれていなければ、何かあった場合には同意書の有無に関係なく、必ず問題化するものだからです。同意書よりも信頼関係を築くことのほうがずっと重要なのです。

では、先生は信頼関係を築くために何をしたでしょう?

先生は、手術の現場に患者さんのご家族1名が立ち合えるようにしました。そして、患部を見せながら、説明しながら手術を行なったのです。究極の情報開示です。

――子供が高熱を出して病院へ連れていき採血や点滴を受けるとき、あるいは家族の誰かが手術を受けるとき、たいていは「外でお待ちください」といわれます。あれってどう思いますか? 外で待っている間じゅう、ソワソワと落ちつかず、不安な気持ちを我慢しなければいけないわけです。同意書は書いたものの、処置室や手術室の中では何がどのように行なわれているのかまったくわからない。これはとても辛いし不安です。

私は、「患者さんがどういう状況で処置とか手術を受けているのかを、家族は実際に知りたいに違いない」と思いました。それは家族にとって、同意書よりもはるかに価値のあることじゃないかと。
(本書より)

「患者目線に立って」と医師たちは口にします。それは当然のことだとわかっているから。しかし、本当にそれを実践している医師は多くありません。その理由を、「本当の意味での患者目線ということを、誰もきちんと教わってきていないからだ」と先生はいいます。

医療人にとって、専門的な「技術」や「知識」の習得は不可欠です。しかし、そうやって身につけたものはただの「手段」であり、患者を治すための「道具」に過ぎません。しかし多くの場合、その習得自体が目的となってしまっている。どんなに立派な道具を持っていても、それを使う人間が強く、真っ直ぐでなければ、本当の意味で役に立つとはいえないというのに――そう先生はいいます。

著者のご紹介

 

岸本 和裕

1970年兵庫県生まれ。福島県立医科大学医学部医学科卒。同大学臨床教授。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。竹田綜合病院皮膚科科長。アレルギー性疾患のみではなく、良性・悪性皮膚腫瘍の手術(皮弁術、植皮術)、レーザー治療、感染症、自己免疫性疾患、炎症性角化症、陥入爪手術、爪矯正術など幅広い分野の診療を行なっている。皮膚科過疎地域で地域医療に明け暮れる傍ら、日々の臨床における問題点を解析して多くの論文を世に送り出し、医学に貢献することを目指している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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