学校を開いたら、町が人が風向きが変わった! ~日本初の官民一体学校「武雄花まる学園」の5年間の軌跡

 

コミュニティ・スクールは、町おこしの切り札になる!

概要
日本初の官民一体学校「武雄花まる学園」の開始からの5年間を描いた教育系ノンフィクション。「学校」という場所の新たな役割を見出した!

小中学校の校門が閉じられている光景は、いまやどこでも当たり前になっています。おもに防犯上の理由からですが、このように学校が“閉じられている”状況こそが、まさに日本社会を覆う閉塞感の象徴のように思われます。

本書は、佐賀県武雄市の公立小学校が日本で初めて民間学習塾(花まる学習会)のメソッドを授業に導入した、いわゆる「コミュニティ・スクール」の5年間を描いた教育系ノンフィクションです。

学校に学習塾が入ったことで、子どもたちの学力が向上したのはある意味当然のことだと言えるでしょう。導入時はそうした期待感もあって注目を集め、多くの媒体で取り上げられました。

ところが5年経った今、官民一体学校は思わぬ副産物を町にもたらしていたのです。

武雄市の場合、官民一体教育の実践にあわせて、学校が“門戸を開いて”地域の皆さんを教室へと招き入れました。彼らは子どもたちを見守り、子どもたちが筆記したプリントに花丸をつけるという「サポーター」の役割を与えられました。
そこで「笑顔」と「会話」が生まれ、その結果、町なかで大人と子どもが挨拶するのが“普通のこと”になっていきました。

地方では、都会と比べて人間関係が濃密だと思われるかもしれません。しかし、現実はそうではありません。コミュニケーションの希薄さ、世代間の断絶は、どこへ行っても変わりがないのです。

ところが、武雄では小学校という現実の場で、日常的に家族以外の大人と接する機会ができました。それが地域のコミュニケーションを活性化させ、世代間の交流を促しました。そう、かつて日本のどこででも見られた、いわば原風景のような……。

過疎化が進む地方では、「町おこし」が大きなテーマです。そこでは、経済的な視点が優先されます。「人を増やすには、産業を興す(仕事を増やす)」という図式です。しかし、仕事が増えれば、人は本当に「そこに住みたい」と願うものなのでしょうか。

町おこしというのは、土づくりに似ているのかもしれません。

どんなにいい種を蒔いても、土地が痩せていたら根づくことはありません。同様に、どんなにいい仕事を用意しても、そこに暮らす人びとの気持ちが閉じてしまっていたら、やはり根づくことは難しいのではないかと思うのです。

武雄市の挑戦は、「学校」という場所を中心に、そこに暮らす人びとを有機的に結びつけました。当初そこまで意図されていたわけではないと思いますが、結果的に町を活性化させる「芽」を育てることにつながったのです。

実際に、まだ確固たる実績をあげたと言えるほどではないでしょう。しかし、
「学校(コミュニティ・スクール)が、町おこしの切り札になる」
という可能性を示したことは確かです。ここで育った「芽」が、やがて全国へと広がっていくことを願って本書は著されました。

◎ 主な内容

(1章)官民一体教育は何を目指すのか?
・官民一体教育導入のきっかけ
・武雄市だからこそできたこと
・子どもたちに必要な「力」とは何か?
・理想の学校について考える ……ほか

(2章)武雄花まる学園が始まった!
・子どもや学校を取り巻く状況
・「コミュニティ・スクール」という考え方
・花まるタイムが意識を変えた!
・見えてきた「理想の形」 ……ほか

(3章)理想の官民一体教育とは
・学校と先生が瀕していた危機
・目に見えてわかる子どもたちの変化
・卒業式での感動的な出来事
・青空協室の意義 ……ほか

(4章)武雄花まる学園が抱える課題と展望
・課題①~③
・保護者にしかできないこと ……ほか

(5章)コミュニティ・スクールを成功に導く鍵
・コミュニティ・スクールのメリット
・気をつけたい「落とし穴」
・広島県福山市常石地区の挑戦
・「自分も子どもを支える一員」という意識 ……ほか

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著者のご紹介

 

前原匡樹

前原匡樹/まえはら・まさき

武雄市協働コーディネーター&人と学校をつなぐ町おこし先生。
1988年鹿児島県生まれ。鹿児島県立鶴丸高校卒業後、東京大学へ入学。大学時代に「学校と塾の連携」について関心を抱いたこと、大学4年時に花まる学習会と出合い、同塾の教育手法や保護者との関係づくりに感銘を受けたことから、大学卒業後に花まる学習会へ入社。
教室担当者として、1年目より幼稚園年中~小学6年生の子どもまで、年間300人を相手に授業をしながら、入社3年目からは長野県青木村の青木小で月1回開催される「思考力を育む授業」の担当者として、公立小の現場での授業経験を重ねた。
入社4年目、佐賀県武雄市に移り住み、同市との「官民一体型学校」事業に、花まる学習会側の担当者として参画。先生方への研修や、花まるの指導法を生かした授業の実践、教材作成を行いながら、公民館を回って地域・保護者向けにも同事業について説明や懇談を重ね、市内での周知・浸透に努めている。また、「官民一体型学校」事業をきっかけに生まれた、武雄市朝日町にあるNPO「Aスタ」では理事も務め、「子どもも大人も一緒になって楽しめる居場所づくり」をモットーに、町民に交じって活動をしている。著書に『子どもたちが作った問題集 こどモン』(小社刊/編著者のひとり)がある。

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