■読者からの手紙

初めまして。突然の手紙で失礼いたします。つい最近、図書館で先生が書かれた「アトピー卒業ブック」という本をたまたま見かけて読ませていただきました。先生の本は、子供や大人にもとても優しく分かりやすく書かれており、アトピー治療を真剣にその人の立場になって書いてある今までにない本だ!! という印象を受けました。先生の考えに共感できることが多々あり、真剣に先生の本を読みとても感動しました。

私は30代の会社員で、生まれた時からアトピー性皮膚炎という病気と向き合いながら生きてきました。この手紙には書ききれないぐらいの様々な困難や加療がありました。先生の本に書かれているように、様々な皮膚科を転々とし、良くなったり悪くなったりを何回も繰り返しながら現在に至っています。正直、中学生ぐらいからアトピーが悪化して高校でピーク、そして23歳くらいで徐々に軽症になり、30歳を過ぎた頃からはケアを念入りにしても様々なアレルゲンに反応して敏感肌が増し、顔や全身の瘙痒感に悩まされ、皮膚科で処方された薬を塗布しながら様子を見ています。

年齢が行くにつれてアトピーは軽減すると書かれていましたが、仕事や人間関係など様々なストレスを受ける環境の中、体が徐々に適応出来なくなっているようで、それがアトピーという形で体にあらわれて20代の頃より更にひどくなっています。

皮膚科の医師に自分のことを伝えても、正直相手にされない……という感じで、パソコンを見たり、肌にも触れず、気の毒そうな顔をしても3分もたたないうちに、「ハイ、次の方」……何回か皮膚科を変えてみても、皆似たような先生ばかりです。

日本人には特にアトピーが多いとのことですが、確かに昔と違って食生活も変わり、花粉症やアレルギーに悩んでいる人が数多くいます。こんなに患者が多いのに、一体なぜアトピーの治療は全く改善されないのかと日々不思議に思っています。

先生の本の中に、アトピー(皮膚科)治療は患者とのカウンセリングも多く、薬もかなり処方され、そのわりに薬代も安く、病院の運営が赤字?になってしまうようなことが書かれていました。だから皮膚科の先生はお金にならない……など。そのような事情があることを知らなかったので、本を読んでからはアトピーの治療が進まないのも分かるような気がしました。

岸本先生のような医者がいれば、アトピー以外の患者さんでも本当に様々な意味で心が救われると思います。できれば直接先生に会っていろいろお話したいのですが、そういうわけにもいきませんので、こうしてお手紙で自分の気持ちを伝えようと思いました。

私は、出来れば薬に頼らず自分の力でアトピーを克服していきたいと考えています。しかし、いくら生活や環境、食事などに気をつけても、ストレスなどでアレルゲンに反応してしまい、アトピーを全くなくすことは困難です。(中略)

30代になると、20代ではそこまで深く考えていなかった様々なことを考えます。多分、病気の人なら誰でも悩むと思いますが、友人関係、仕事、家庭、育児、恋愛や結婚……私は今まさに、今後どうやって生きていけばいいのかとかなり悩んでいます。正直、アトピーがあることで様々なことを諦め、この病気がなかったらもっと自分の人生が変わっていたはずだと日々思っています。(中略)

自分の幸せとは何かといつも考えています。先生の本にもあるように、自分のやりたいことを頑張って、アトピーだけの人生で終らないように自分でも努力して、自分で自分の未来を切り開いていくことだと思います。毎日毎日アトピーのことを考え、ノイローゼにもなりましたし、正直死んだほうが楽になるのでは……って考えたりもしました。私に限らず、アトピーの人、病気を抱える多くの人々は、一度はそのような思いをしたことがあるのではないかと思います。

《アトピーの悪化=自分が悪い》と、皮膚科の先生ご自身は悪くないような言動をとる人もいます。そのたびに自分を責め、アトピーで生まれて来たことに後悔し、場合によっては死を考えてしまうこともあります。その繰り返しを長年やっていると、本当に生きる気力や楽しみなどが薄れてきます。様々な絶望を抱えて、皮膚科にやっとの思いで通院している患者さんもいることを分かってほしいです。

岸本先生の本を読み、患者さんに語りかけるように、そして患者さんが抱えているつらい思いを分かった上で文章を書かれていることが良く分かりました。この本を、アトピーに悩む多くの人々に読んでいただきたいです。きっと心の支えになると思います。

“アトピーのためだけに生きてはいけない”そのフレーズが心にかなり残っています。また、人の幸せは人の役に立つことともありました。私は、アトピーを通じて感じたつらいことや悲しいことなどの様々な思いを、“人としての思いやり”に変え、少しでも心の悩みを抱えている人達を支えていけたらと思っています。

アトピーと向き合って生きていく。本当に健康な人には分からないくらい大変だと思います。でも、自分の人生は自分で変えていかないと……ですよね!

先生は福島県在住とのことですが、3年前に起きた東日本大震災では多くの人が亡くなり、様々な被害をもたらしました。先生の病院は大丈夫でしたか? 本当に悲しい出来事でしたが、多くのことを考えさせられました。

最後になりますが、先生に気持ちを伝えられて良かったです。先生もお仕事大変だと思いますが、お体お大事にして下さい。読んでいただき、ありがとうございました。

 

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■先生からのお返事

お手紙ありがとうございました。拝読し心が痛みました。この方と同じようにつらい経験をされている人全員に読んでいただきたいと心から思います。多くの同じような患者さんの診療経験から「徹底した患者目線」を貫いた本です。皮膚科医療の現状を客観的に分析し、我々皮膚科医の「心ない診療」がこういった気の毒な患者さんを生み出していることへの反省…から再出発しなければなりません。しかしながら、それを自覚しようとする皮膚科医がほとんどいないのが現状です。こういった内容の本は今までありませんでしたし、診療で親身になって語りかけてくれる皮膚科医もほとんどいないために、経験がつらければつらいほど、本の内容が心に沁み通るのだと思いますし、もう一度がんばってみようという希望にも繋がるのではないかと思います。

これからは、重症化するアトピー患者さんを減らすために、軽症で発症初期の段階であっても、早期介入&早期予防という観点から積極的な啓蒙活動が必要だと痛感しております。

担当の先生が納得のいく診療や説明をしてくれなくとも、この本には知りたいことが満載されています。誰でも理解できる皮膚科専門書です。また、お手紙の方のように、心が折れそうになっている人には勇気と希望をもたらしてくれる不思議な本です。

(岸本和裕)

㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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