中竹さんの新刊「どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て」の中から、特別に一部をご紹介します。
全員がリーダーになる必要がある時代
今は、「リーダーになれる人が素晴らしい」というような言われ方を社会ではしています。
でも、私はリーダーの定義は自分たちで決めたほうがいいと思っています。
世の中のリーダーの定義ではなく、自分の組織を見て、タイミングや状況を考えて、どんなリーダーが必要なのかを考えるべきだと思うのです。
時代とともにリーダー論は変わってきました。最近はマルチリーダー制が成功するとわかってきて、スポーツ界でも導入が顕著になってきました。
今回のラグビーでは、31 名の公式枠中8人がリーダー(という役割)だったことがその一例です。
これだけのリーダーがいるため、ある試合ではキャプテンが控えに回るということがありましたが、そのことに誰も違和感がありませんでした。
時代背景として、「リーダーになりたくない」という人も増えています。
なぜリーダーになりたくないのか。それは責任を持たされるのがイヤだからです。
そう考えたとき、リーダーは責任ではなく「責任感がある人」でよく、それが何人いてもいいし、全員がリーダーでも構わないと考えることができます。
リーダーとは「役職」ではなく「役割」の名称に過ぎない。
それは能力も役職も関係なく、心がけ次第でできることです。
オーセンティックなリーダー、自分らしく誰のマネもしないリーダーがいるチームや、非公式なリーダーがいるチームは強いです。
リーダー、副リーダー以外に、役職はないけれど、必ず「あの人は、リーダーだよね」という人がいる。
全員がそんなリーダーになればいいと思うのです。
リーダーというのは、常に最高の場所にいることを望まれるものです。
でも、キャプテンだって調子の悪いことがある。
実際に今回のワールドカップで言えば、「本当のリーダー(キャプテン)が最後の10分にコートに立っていないと勝てない。
だから今は控えでいてくれ」と、監督がキャプテンに伝えた試合もあったようです。
実際にそうなることを予言していたわけでなく、そういう考え方をして全員が前向きにプレーをしたほうがいいという考えでそう伝えたようですが、実際にそういう展開になりました。
しかし、リーダー役のみんなが、リーダーとして一選手として頑張ってくれた。
そのため、キャプテンは一プレーヤーとして、試合に出ない時間をフォロワーに専念することができたのです。
「チーム作りは一人じゃできない。リーダーが作るのではなく、みんなで作るんだよ!」と常々言ってきました。
その結果、一人ひとりが「自分がリーダーだ」と思うようになったのです。「自分が引っ張るんだ!」もしくは、「自分が支えるんだ!」ということが、私のリーダーの定義ではありません。
全員がリーダーシップとフォロワーシップを持って戦う。全員が「リーダー」であるべきなのです。
私の定義による「リーダー」は、「責任」ではなく、「責任感」を持っている人です。だから、新入社員とかインターンシップの子でも、全員がリーダーになることができます。
責任感なので能力に関係なくできるのです。
一番厄介なのは、責任はあるけれど責任感がない人。
そういう人がリーダーだと他責」の空気が流れてチームが揺らいでまとまりません。
何か問題があったときに、直接関わってはいないけれど、「なんとかしなきゃ!」と思える人には「責任感」があります。
他責ではなく、常に自責として考えられるリーダーがたくさんいるチームは、自ずと強くなります。
中竹竜二
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―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役。日本ラグビーフットボール協会理事。1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。