保護者からよく相談を受ける内容です。この場合はふたつの理由が考えられます。
1、 親が信頼されていない
私がこれまでに見てきた保護者のタイプはとても似通っています。子どもの顔色ばかり伺っていて、どうしたらいいのかわからずに振りまわされているというタイプです。
そういうお母さんは、子どものご機嫌をとるような接し方をしがちで、「子どもがああいったから、こういったから」と、子どもからの「批判」や「評価」に振りまわされてばかりいます。
子どもは、そんなお母さんの態度を見ていて試してきます。
「お母さんは私のことを愛してない!」
そういわれて、オロオロしてしまうお母さんのなんと多いことか……。
「お母さんがお子さんを愛しているかいないかは、お子さんが決めることなの?」
そう尋ねると、とても驚かれます。おそらく子どもにとって自分に都合のよい「お母さん像」があって、それにこだわり騒いでいるだけです。
「お子さんのこと愛してないんですか?」
「と、とんでもない、愛してます!」
「ではなぜ、お子さんに愛してないっていわれて動揺するのですか?」
「………………」
そもそも、愛しているとかいないとかは、お母さんの気持ちの問題です。自分がどう思っているかについて他人からどうこういわれるものではないはず。たとえ親子であっても、自分の気持ちは他人が決めるものでありません。
「お母さんは自分のことを愛していたらこう行動する」という〝こだわり〟が子どもの側にあって、それに当てはめようとしているだけです。この場合、お母さんの「愛」の気持ちなんてお子さんにとってはまったく関係がありません。
それなのに、お母さんはわが子がどう思うかを考えるばかりで、本当の自分の気持ちがわからなくなり振りまわされてしまう。
「私のいうことを聞いてくれない」ということは、逆にいうと「ほかの人のいうことは聞くことがある」わけです。ではなぜ「私のいうこと」だけ聞いてくれないのでしょうか。
例を挙げます。飼い犬のことを考えてみましょう。
犬は信頼している人のいうことしか聞きませんね。そして、エサを与えてくれるからといって信頼するわけではありません。「親のいうことを聞かない」と相談してくる人の多くは、「子どもにわかるように伝えていない」場合や、「子どもから信頼されていない」場合もあります。
厳しい言い方になりますが、理由はご自身にあるのかもしれないということです。ところで、不登校になる発達障害の子も多くいます。学校へ無理やり行かせる必要はない、と個人的には考えています。
しかし、学校に行かない場合でも、自分の好き勝手に生活させるのは違います。ゲームを許すのなら、少なくとも時間を決めるとか、お昼ごはんはテーブルで一緒に食べる、犬の散歩を一緒にするなど、簡単なルールでいいので、必ず守らせることを決める必要があるでしょう。
2、子どもに高いハードルを求めている
すでに何度も述べているように、療育は子どもの発達段階に合わせてその目標を設定する必要があります。
▽(相談)何度注意してもやめてくれません
たとえば、「買いものに連れて行くと大騒ぎをして親のいうことを聞かない」という場合について考えてみましょう。
本来お母さんが理想とする目標は次のようになるでしょうか。「母親の都合に合わせて臨機応変に買いものができるようにしたい。そのあいだ、問題行動を起こさずに大人しく買いものに付き合えるようになってほしい」
しかし、この目標は子どもにとってはおそらくハードルが高いために「大騒ぎ」になってしまうことが考えられます。そこで、いくつかの理由や環境などの条件について考えてみることにします。
❶子どもは指示が理解できる発達段階にあるか
❷理解していても我慢できずに騒ぐのか
❸物理的に止めることは可能か
❹その買いものには子どもを同行させなくてはいけないか
❺ネットスーパーなど利用することはできないか
❻ほかのスーパーなら騒がないのか
❼ほかの時間帯で大丈夫な場合があるのか
まずはこれらを見直すことで、子どもにクリアしてほしい目標を設定し、必要な環境設定を考えます。目的が「必要なものを買う」なら、「○○だけ買う」と子どもと約束をする。
「騒ぐことをやめさせる」のを目標とするなら、騒いだら買いものをあきらめてすぐに帰宅するといったことや、ひっくり返って自分の思い通りにしようとしないように手をつなぐなど、発達段階や子どもの理解度に応じて目標を設定するのです。
こうすれば、「親のいうことを聞かない」というような状況を回避することが可能になってくるはずです。また、「ご褒美とペナルティ」も有効な手段です。彼女たちは「心」の共感が難しいので、やはり「物」というご褒美を利用するほうが結果を得やすいと思います。
ペナルティを設けるのであれば、基本的な衣食住を除き、子どもが「損したな」と思うものがよいと思います。
―『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』 ルール44 「親のいうことを聞かない」理由は親の目標設定にある! より
◆本書の紹介◆
発達障害の女の子の保護者や支援者が気をつけるべき点や、知っておくべき情報などを全6章、「47のルール」としてわかりやすくまとめたのが本書です。1章 診断や医療機関の上手な使い方について
2章 親としての心構え、親のとるべき行動
3章 日常生活での支援と療育について
4章 健やかな生活を送るための学校選び
5章 女の子に必要な「学び」-思春期と性教育
6章 療育支援Q&A
「何度注意してもやめてくれません?」
「プライドが高くて注意するとパニックになります」
「新しい場所や新しいことが苦手です」など。
豊富な経験や、専門家からのアドバイスをもとに著者が作りあげてきた「発達障害の女の子たちが幸せに生きていくためのノウハウ」です。
ぜひご活用ください。
―藤原美保(Fujiwara Miho)
健康運動指導士、介護福祉士。株式会社スプレンドーレ代表。エアロビクス、ピラティス、ヨガインストラクター等フィットネスのインストラクターとしてスポーツクラブ、スポーツセンターでクラスを担当。発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目のあたりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げる。
100組以上の発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきた経験を踏ま、実践の場からの声を届けるために、
『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』を執筆。
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