【エッセンシャル出版社の考える「出版のミライ」⑦】
出版業界の仕組みを見ると、実はフードロスと同じような現象が起きています。書店に配本されても、その多くは返品されることがほぼ前提となっていたり、全部は売れないという前提で多めの書籍を刷って置かれたりしています。また、今は出版点数が増え、1冊毎の売上数は落ちてきています。そういう流れの中で、私たちの元々の志は、社会が良くなるために書籍を出版しているので、本を「買っていただく」「読んでいただく」ということ以外に、「本当の意味で、役に立ててもらうには、どうしたらいいか?」ということにもう少し力点を置いていく必要があるのだろうと思います。
今回は、「本は何の役に立つのか?」「そもそも、本の価値とは何か?」について考えていきたいと思います。
こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
私が、”本づくり”をしていく上で、日々、どのようなことを考え、どのような目的で本をつくっているか、記事風に残していきたいと思います。
【プロフィール】
大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。
エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/
本に限らず、インプットしたものの価値は何で決まるか?というと、インプットした情報をいかに価値に変えられたか?ということにつきると思います。
要するに、何かを見る、聞く、読む、知るということをしたときに、自分というフィルターを通して、いかにアウトプットするか(アウトプットしなかったとしても、自分が豊かになるようにストックできるか)によって、その価値は変わっていくのではないか?ということです。
例えば、1万円のセミナーを受けたとします。
1、あんまり自分には関係なかったなと思う人
(時間が奪われたという意味でマイナス価値)
2、「なるほど~」と思ったけれど活用しない人
(知識が増えたという点で1万円の価値)
3、「なるほど~!やってみよう!」と思い、挑戦してみた人
(価値は2万円以上の可能性)
4、「なるほど~!これにも応用できそうだぞ!」と思って、いくつもの活動に応用する人
(価値は2~5万円以上になる可能性)
5、応用もするし、自分でもその視点について深めて、更に発展させて皆に伝えられるようになった人
(価値は5万円以上になる可能性)
これはあくまでも例えですが、同じセミナーを受けていても、同じ講義や授業を受けていても、人によって、効果・成果は全く異なります。つまり、価値は人それぞれということになります。
学校もそうでしたよね。同じ授業を受けていても、テストの点数(理解度)は全くバラバラです。
もちろん、人によって、その価値自体の考えも変わるとは思うのですが、せっかくインプットするならば、より自分が豊かになったり、より良いアウトプットができるようになったり、より良い活用ができるようにしたいと思いますよね。
出版の目的は、本を読んでもらうことではありません。その本を読んでいただくことで、その方の人生がより良く、より豊かになるといった個人的価値・社会的価値の提供のはずだと、私は考えています。
そう考えると、その目的を達成するためには、「本が売れる」「本を読んでいただく」ということを目的にするのではなく、買っていただき、読んでいただいた本をいかにより良いものにしていけるか、といった点も考えていかなければなりません。
例えば、ある本を読み、ある情報をインプットしたとします。
その後、どんなアウトプットの仕方、役立たせ方、価値の付け方が考えられるかというと…
①熟成させて、別の価値を付与して活用する
②構造を掴んで、その構造を使った別のアイデアを考える
③相手がわかりやすい例えの一つとして、自分の中にストックし、いいタイミングで使う
④インプットしたことについて、自分もやってみるということをする
⑤自分の心の豊かさとしてストックし、感性や考え方として活用する
この5つが考えられるのではないかと仮説を立てました。
そして、この仮説を元に、5つの活用を、読者がより実践しやすいようにするための新しい試みを、2021年に向けて、検討・実行していきたいと思います。
(まとめ)・出版社として、「買っていただく」「読んでいただく」のその先まで考える・読者の方が、「インプットしたもの、見たもの、聞いたもの、体験したものを、自分なりの価値に変える力」を培うサポートを検討する
少し話は違いますが、「これをする・検討する」という判断以外に、一方で「これはやらない、これをやらないと決める」ことも、「出版のミライ」として考えていくべきだと、最近、気づきました。
次回以降、この視点も記事にしていきたいと思います。
▽エッセンシャル出版社の考える「出版のミライ」
Himalayaで、このテーマに関連した音声動画を配信しています。