こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
本日は、編集部の磯尾さんと小林で、中竹竜二さんがVoicyで紹介していた楠木建さんと杉浦泰さんの「逆・タイムマシン経営論」を参考に、過去の記事から、これから起こる未来を想像してみました。
これまでは、「時流を読む」、つまり、今の現象から、未来を考えるということをしてきましたが、未来と過去の両軸を考えることでも、また、新たな発見があるのではないかということで、しばらく続けていきたいと思います。
マーケティング的な視点では、「スパイラル理論」と呼ばれる、ある事象や商品などのトレンドが、大体12年周期で形を変えて再流行するとか、10年、20年周期で、ブームが起こるという説があります。
たとえば、本・出版の世界でも、20年に一度は日記ブームがきたり、30年に一度は文章術ブーム、俳句のブームがくるというような話もあります。
ということで、過去の記事を参考に、これからくる未来を想像してみます。
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今回は2015年11月20日。
全国約1000店舗で展開 美女だらけのビジネス書フェアという5年前の記事をもとに、いろいろと考えてみたいと思います。
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■全国約1000店舗で展開 美女だらけのビジネス書フェア
記事は、美女が表紙になったりしたビジネス書のフェアを全国の書店で開催したという内容です。
目次
1、美女読書の面白ポイント
面白いポイントとしては、「美女×ビジネス書」という、親和性の低いもの同士を掛け合わせたところでしょうか。書店さんとしては、書籍の売上も下がっている時代に、書店に来ていただくアプローチとして、内容の前に、いかに「お客さんに興味を持ってもらうか」という取り組みを始めた駆け出しの企画なのかもしれません。
また、「何を買うかではなく、好きな人がオススメしているものを買って読んでみる」という、繰り返し起こる「オススメ書」のアプローチパターンにもなっています。
2、美女読書をスパイラル理論で見る
スパイラル理論的に考えると、1993年にリクルートから『ダ・ヴィンチ』という雑誌が創刊された出来事があります。この雑誌が画期的だったのは、本の書評・広告に特化した雑誌であったことと、俳優やミュージシャンが、オススメを推薦する内容だったという点です。
【本の推薦の変遷】はこのようになっています↓↓
大学教授などアカデミックな人がオススメする
↓
1993年『ダ・ヴィンチ』創刊で芸能人、俳優、ミュージシャンがオススメする
↓
少し身近な存在(アイドルなど)の人がオススメする
↓
2015年 ビジネス書×美女
「美女読書」までくると、掛け合わせが面白いのもそうですが、書籍を置く空間として、装飾がキレイ、かわいいものに見えるように、といった、空間の見せ方にまでこだわるようになっているという点が新しいのではないかと思います。
今では、代官山蔦屋書店さんなどが代表的な例ですが、書店が「本を買いに行く場所」というよりも、「居心地のいい空間がたまたま書店(本も売っている場所)である」というような流れも顕著になってきています。
今後は、さらに、「遊び場としての書店、癒される場所としての書店、楽しみに行く場としての本屋さん」が生まれてきても面白いかもしれないですね。
3、本屋と百貨店の変化について考える
百貨店・デパートは、今、「物を買って、持ち帰る場所」ではなく、「物を実際に見たり、試したりする場所」に変わりつつあるように感じます。いいなと思ったものを、デパートで確認したり、試着したりして、購買はネットで行い、家に届けてもらうような変化が起きているのです。このようなシフトを見ると、書店さんも、本を「買う」場所ではなく、「見る場所・体験する場所」になり、買うのはネットで…という流れがさらに加速するのかもしれません。
ただ、書店さんで「本を買わない」人が増えていく場合、書籍のインターネット販売で最大手のAmazonがあるので、書店さんとしては、新たなビジネスモデルや価値を考えていく必要が出てきます。
その際にも、「どのように本を売る場所としての価値を見出していくか」という問いがポイントになってきてそうです。
4、体験を提供し、グッズを販売。そして日常への取り入れ方を提供する場
これからの書店ということで、そもそも、空間・場所・店舗の価値という点から考えてみます。
たとえば、穏やかな気持ちになれる空間を提供するお店、ラグジュアリーな気分を体験できるお店といったコンセプトショップがあったとします。
そこに行くと、穏やかな気持ちになれる体験があり、それを日常でも取り入れるために、そこで使われているアロマが売っていたり、アロマの装置が売っていたり、香りの効能とか使い方が書かれた本が売っていたり…そういうコンセプトであれば、その場所で体験もできるし、日常で取り入れたい人はその商品や本等も買って帰れるという利点があります。
ラグジュアリーな気分を体験したいというときには、たとえば、ブランドに関係なく、ラグジュアリーに適した洋服がおいてあって、着られるお店があると面白いのではないかと思います。そこでは、試着した服の着心地を試しながら、その服にあったメイクをしてもらえたり、そのメイク道具や服が買えたり、日常でも少し着飾った場所に行くときの視点が学べる雑誌とかマナーの本などが置いてある場所。
「実際に体験をすることができる」ということ自体が価値となりますし、体験をした後の自分の生活が、少しでも変わっていくことが、体験したものの価値をより高めていくので、体験だけでなく、その場所でグッズを販売する意味も深まるのではないかと思います。
そう考えていくと、これからは、もはや、例えば、「アパレルショップ、書店、メイク化粧品売り場」というくくり自体も無くなっていくのかもしれません。
5、自分らしさ全開のお店を出すには
磯尾さんが20年以上前に編集した『自由であり続けるために、僕らは夢でメシを喰う―自分の店』という本があります。
それは、簡単にいうと、例えば、花と本とオートバイが好きな人がいたときに、花屋をやるかオートバイ屋をやるか、本屋をやるかではなく、花とオートバイを売っている本屋をやればいいというメッセージの本です。
つまり、お店とは、ジャンルや分野で分けられるものではなく、一人一人それぞれ違う、お店を開く人の「自分が好きなものに溢れているお店」になるのです。来店者目線からすると、例えば、「花に興味はあっても、オートバイには興味は湧かないんじゃないか?」と思いがちですが、「強烈に○〇が好き!」と思っている人に聞く「○○の話」というのは、購買するかどうかは別にして、それだけで、何か人の心を動かすものがあると思うのです。
結果、「人の心が動く空間・場所・店舗」になる可能性も高まります。
たとえば、インスタで、人がフォローしている写真を見ると、それぞれ、誰もが、自分の好きな世界観で溢れています。その「好き」の度数によって、それを見たり読んだりする人の心も、スキ!いいね!共感!共鳴!といった形で動かします。ピンタレストというサイトはそれをさらにピンして集めて、カテゴライズしていくサイトです。「自分の心を動かすもの・写真・コトバ・イメージ」を集めるという行為自体が、自分らしさを見つけるための大きなカギにもなっているのではないかと思っています。
エッセンシャル出版社の書籍の中に、『和法』という書籍があります。人の心を動かすCM創りのプロ、クリエイティブディレクターのサトー克也さんの著書なのですが、サトーさんの仕事の仕方、メッセージの中にも、「ワクワクに従って生きる」または「ワクワクは人生の道先案内人」という言葉が出てきます。
「ワクワクに従って生きる」ということは、今ある世の中や社会の枠に縛られずに、自分がワクワクするものを集めていく生き方とも言えそうです。
これからの時代、枠を取り払った視点で、自分の好きに囲まれる、やりたいことをやるという生き方が、ますます、しっくりとくる時代になるかもしれません。
6、本屋さん以外でも本が買える時代に
書店さん以外のところでも本が買える時代への一歩として、エッセンシャル出版社としても新しい試みを始めました。書店以外の小売店にも卸すことができるスーパーデリバリーさんというサイトへの加盟です。このサイトで、書店さん以外のお店にも本を展開していく可能性を試そうと考えています。
本の内容と親和性があるお店や空間に置かれるのもありがたいですし、逆に、本の内容とは全く親和性がないところに置かれるのも面白いのではないかと思っています。
たとえば、エッセンシャル出版社の本が、車屋さんに置かれることになったということが起こったら、面白いですし、逆に、エッセンシャル出版社の『おむすび7』という絵本が、全国のおむすび屋さんの店頭に置かれる未来も想像しています。
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7、異業種×本/ウーバーイーツでサイドブックはどうか?
「異業種×本」という視点で考えると、例えば、ウーバーイーツで、サイドブックのようにテイクアウトの商品と共に、書籍も一緒に届くようになってくると面白いと思います。
たとえば、アボカドが入っているメニューを提供しているところでは、アボカドの食べ合わせについての本も、ウーバーイーツのメニューに、サイドブックとして置いてあったり、カロリーの高い食べ物を販売しているお店では、『食べ過ぎた!と思ったらすぐに家でできる5分体操』といった本をサイドブックとして置いておくなど。
こういったことが、書店さんや出版社とウーバーイーツをやっている飲食店とで提携できたら、Amazonよりも早く届く、更に画期的な仕組みになるのではないかなと思っています。
8、店舗を持たないウーバーイーツ店
最近、ウーバーイーツ・宅配をメインに考えた店舗を持たない飲食店が増えているそうです。今までも、出前というスタイルはありましたが、自粛期間を経て、このような形態はより多くなってきたのではないかと思います。
更には、一つのキッチンを使って「唐揚げ専門店」と「○○専門店」などと複数の出前/ウーバーイーツだけのお店を持つところなども出てきました。
▽【出版のミライ⑲】飲食業界の生き残り戦略に学ぶ
一つの過去の記事から、過去、現在、未来を行き来して、いろいろなアイディアが溢れました。過去の変遷を知ることで、これからの未来をより想像しやすくなるという良さや面白さを感じました。
これからも、過去の記事などから、出版のミライ、社会の将来について、いろいろと思考を深めていきたいと思います。