『全員参画経営』の著者・簑原麻穂さん Q&A集です!
※「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ①―Q&A①―
▽「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ―Q&A① ―改革に必要なキーワード
■改革に、どうやって人を巻き込んでいくか
Q. 組織の皆さんも巻き込んで、組織改善をしていきたいと考えています。まず、自分が取り組んだ実績をもってフィードバックするのか、それとも、はじめから皆さんと「一緒に取り組もう!」とするか迷っています。簑原さんならどうされますか?
A. まず、自分は何のために、何を実現したいのかを考え、協力してくれる仲間を探します。改革を押し進める際には、その仲間と一緒に行動することもあるでしょうが、時に一人で行動し判断することもあります。
目的と目標、ゴールを共有し、大切にする価値観や判断基準を作りながら、一人ひとりの想いを重ねます。それぞれがそれぞれのフォーメーションを取りながら、連携していきましょう。
Q. 変わることや挑戦することに、「消極的・否定的な社員」と「積極的・挑戦的な社員」で2極化するなかで全員参画を進める場合に、留意すること(消極的・否定的な社員とどう対峙するか)を教えいただけると助かります。
A. 私はそもそも、変わることや挑戦することに消極的な人がいてもいいと思っています。
その人は、たまたま、そういった時期なのかもしれない。また、トラウマがあるのかもしれないし、恐れや恐怖があるのかもしれないですよね。
全員参画経営で大切なのは、自分が自分の強みを認識すること、そして、その強みを活かしてくれる仲間がいることです。
消極的な人は、自分に自信がないのかもしれません。しかし人は、活躍するステージができると、変化を嫌がらなくなるものです。まずは、その人の強みを本人や仲間が見つけ出し、認めてあげること。そうすると本人も自信が持てますから、挑戦する立場に変わる可能性があります。
消極的な人や否定的な人に対しては、強制も排除もしないことです。エネルギーが強い上に否定的な人の場合は、しっかり想いを聴いてあげるとよいかもしれませんね。本当は変わりたいけど、エネルギーの矛先が違っているだけの可能性がありますので。
Q. 既存のやり方を変えることは、業務に関わるメンバーを否定してしまうようで、なかなか全員がフラットな気持ちで判断したり、変革に向けて動き出すことができないのではないかと、率直に思います。
こういったなかで、十分な対話と目的の共有を前提として、行動変容を促すポイントや立ち回りのコツがあれば教えていただけますか。
A. 既存のやり方を変える=自分の存在そのものを否定されていると感じる人が多いですよね。
それは特に、自分と仕事が一体化しているケースによくみられます。自分たちの仕事の目的や、何を実現する為に今の仕事をしているのかなどを考えていると、「人に貢献したい」「役立ちたい」「もっと仲間とワイワイ楽しみたい」などの想いが湧き出てくる可能性があります。
そういう想いを共有した仲間と、「もっとこうしようよ!」「一緒にこうしていこうよ!」と巻き込んでいくプロセスが作れると、相手も少しはフラットな状態になれるでしょう。
人間とは反応する生き物です。まずは、自分がフラットな意識でスタートすると、相手の偏った反応に刺激を受けずにいられますし、気持ちも落ち着きますよ。感情のエネルギーは良くも悪くも伝染するので、自分からエネルギーの方向性を変えてあげることはとても重要です。
Q. 周囲を巻き込んで取り組んでいきたいと思っても、考え方の違う人や関心のない人も巻き込んでいいのかと、そこに大きな壁を感じます。
その人に直接思いを伝えたり、面談などを通じて対話したりなど、『全員参画経営』に書かれていることをやりたいと思いますが、「周囲にどう思われるだろう」「わかってもらえなかったらどうしよう」といった不安が付きまとい、なかなか行動を移すことができませんし、簡単なやり方で済ましてしまいそうになります。簑原さんのように積極的に行動していくにはどうしたらよいでしょうか?
A. 自分がやりたいこと、成し遂げたいことを話せる、共感してくれる人をまず見つけてみたらどうでしょうか?仲間を一人ずつ増やすことからスタートです。
プロセスデザイナーは、そういったことにズカズカ入り込んでいくのが仕事ですが、私が前職で改革を起こしたときは、仲間作りからスタートしましたよ。
大々的に始めると、否定的な声もたくさん聞こえてくるものですから、まずは、じっくり自分の実現したいことをわかってくれる人を見つけて、その人に相談し、協力しながら進める。仲間が増えると、自分が思いもよらない結果がついてきたりしますよ。
■改革を進める上で必要な認識
Q. 『全員参画経営』で紹介されているような、企業文化を変える本質的な取り組みの必要性は感じるのですが、現代の環境変化を考えると、時間がかかりすぎる部分があると思いました。従来のやり方とどのようにバランスを取り、どう進めればいいのでしょうか。
A. 会社文化をまるまる改革し定着させるには、時間もエネルギーもかかります。そこで働く人々の思考行動パターンが変わるわけですから、そんなに簡単なことではありません。
事業と人と組織の成長を同時に転換させるには、この3者の課題設定と思考行動パターンを転換・シフトさせるための「改革のテコ」を見つけ出すことが必要です。経営層やコアメンバーがそのテコを共有し、判断基準ができると改革のスピードがあがり、結果的に変化の時間軸は短くなります。
Q. (表面上ではなく現実の)会社全体の方針や動き、部が目指す方向などが伝わってきづらい部分が多く、担当者が情報を探りながら最善策を模索することも多々あります。
十分な情報がない―こういった中で、上手く動きを作るポイントはありますでしょうか。リーダーから明確な方向性を引き出し、職場のメンバーのモチベーションを上げるために働きかけを行うことに難しさを感じているのですが…。
A. 情報がない中で動くのは大変ですよね。私が支援してきた企業の多くは、階層で情報が遮断されているケースはよくありました。こういった環境は、いくら貢献しようと思っていても、動くのに限界があり、結果的に主体性を妨げていました。
しかし、ほとんどの会社は、情報を「クローズ」していたわけではなく、情報の発信が弱い、どこに情報があるのかがわからないなど、「情報発信の仕方」が問題だったのです。ある企業の場合は、上司や仲間と相談し、情報発信の仕方を変えたり、方針や現状の数字などやりとりして理解する場などを作っていましたよ。
Q. 「業務フローの見える化」をする時、何に焦点をあてる…といいますか、何を軸にしたらよいのでしょうか。
A. これは、基本的には部門を超えた流れを必要とします。
例えば、「開発から顧客の手に渡るまで」が大きな流れだとすると、どの部分を見える化しているのか、また、どこで滞っているのかなどのボトルネックを観ます。また、どこで価値を高めるのかなども見て改革をしていきます。
Q. マネージャーが自己の弱みを認められないときは、どのようなアプローチをすればよいのでしょうか。
A. 弱みが認められない理由として、それを認めると自分の立場が悪くなる、といった恐れや不安などがあるのだと思います。弱みを見せても大丈夫だという安心感は母性性を活かして作れますよ。これこそ、母性の包容力で受け止めてあげるとよいかもしれません。
Q. 「自分を認めてくれる、成長できる、という土壌のある組織だと、熱意ある社員が育つ」という趣旨の言葉がありました。経営者ではなく、中堅社員として「お互いに認め合う。年齢・年次に関係のない風通しの良い文化」に貢献したいのですが。
A. 仲間の強みを理解し、仕事を通じて価値を高め合い、お互いに協力し合いながら仕事をすることだと思います。
Q. 全員でまじめに気楽に対話をして、良い方向へ進んでいくことが必要だと思うのですが、例えば真面目のみの会議で、何度同じことを話しても、仕事を進めない人がいたとします。どのような方法でモチベートし、一体感を生み出すべきでしょうか?
A. その人なりに仕事を進めたくない、もしくは進められない理由があるのはないでしょうか。進められないのであれば、他の方にお願いするか、「この仕事についてはやめておきますか?」と聞いてみるのもよいかもしれません。
Q. ライフサイクルのフェーズについて、事業が今、どの局面を迎えているのかは、どのように判断するのでしょうか。また、導入期における課題について、トップダウンの要素が強い時にどのように提言していったらよいのでしょうか。
A. ライフサイクルのフェーズは、事業の歴史を知っている方や、仲間と議論するのもよいと思います。各フェーズで必要な機能を見立て、足りない場合は、組織やマネジメントの価値観や判断軸を明確にして、日々の仕事の中で補完していきます。
Q. 日々アンテナを張って積極的に情報を取りに行く、目的意識を持つようにするなどの他、「このような動きをすると全体に影響を及ぼすことができる」といったポイントがあれば教えていただきたいです。
A. 人や、コト、仕事の仕方などで起こる影響をよく見ておくことです。また、大きな流れを変えたい時には、どのエネルギーを使ったらよいか、よく考えます。
Q. 改革では、どこで「失敗」とするのか、また、振り返りは、どのようにするのか教えていただきたいです。
A. 改革はいつも順調に進むわけではないので、立ち止まり、修正し、試行錯誤しながら継続することが大切です。「諦めた時点で失敗になってしまう」のかもしれません。
また、事業・人・組織がバランスよく成長することを、目指すべき姿とした場合、この3つのバランスが崩れている場合は、プロセスの修正が必要です。特に、売上や収益を上げることだけが目的になると、人や組織はギスギスと疲弊していき、結果的にバランスが崩れます。
Q.女性だからこそ、男性よりできる経営とはなんだと思いますか?
A. 繋ぐ力は男性よりも強いですよね。生活や暮らしに密着した事業、また商品やサービスの開発。ほかに、人が安心して育ち、学びあうことができる組織を作ることなどではないでしょうか?
※「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ―Q&A③ ―身近な疑問から考える URL
―簑原麻穂(Minohara Asaho)
スコラ・コンサルト プロセスデザイナー
泣く子も笑わせる関西出身。 JASに就職し、チーム連携と新商品開発による
顧客価値アップを実現したのち、JALとの統合プロジェクトにも参画。 リーダー育成や教育のしくみづくり、組織・システム統合、 新サービスの開発など組織の機能と マインド両面の変革を 要求される多数のプロジェクトに貢献。 その後、事業の成長と 人材と組織の関係をつきつめるべくスコラ・コンサルトの門をたたく。 積み重ねてきた幅広い経験から、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、 大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で磨いた感性が武器でリアリストでありそこはかとなくストイック。次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。 加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で 磨いてきた感性が武器で、 リアリストでありそこはかとなくストイック。 次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、粘り強い支援が特徴。経営者やリーダーの悩みや葛藤を受けとめながら、真の強みをとことん引き出す。その上で、事業をもう一段階成長させるために必要な要素を独自のバランス理論で見立てて、 人の持ち味・能力・経験の組み合わせで構築する。「組織の変革を成功させるために は、男女を問わず、人の強みを活かし合える環境が大切」。そこにある素材で最高の料理をつくる。
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