『全員参画経営』の著者・簑原麻穂さん Q&A集です!
「全員参画経営」とは?
多種多様な業種、20人~10万人規模の企業の業績の向上・回復を導いてきた、スコラ・コンサルトのプロセスデザイナー・簑原麻穂さんによる新理論。
「父性性」と「母性性」という新しい見立てで全体を俯瞰することで、経営者が、まず自分の不安の正体・本質を掴む。そして真の課題を洗いだし、メンバーの隠れた能力や強みを引き出していく。人は活躍できる場とその道筋が目に見えると、「動き出す」!
▽この危機をどう乗り越える?適材適所の先を行く“全員参画”経営ーV字回復の指南書
■「父性性」と「母性性」とは何か?
「父性性」「母性性」
性別問わず、誰にでも備わっているもの。このバランスがその人の個性になる。改革のために、まずはこのバランスを整え、思考パターンの歪みを認識することが大切。
Q. 個性によるものと思われますが、自分に、父性性・母性性のどちらかが足りないと思う場合は、周りのメンバーの父性性・母性性の力を借りた方が良いのでしょうか。また、自分の父性性・母性性のとらえ方、伸ばし方の視点をお教え頂ければ幸いです。
A. 自分が目指すものや、ありたい姿を実現したいと思った時に、「もっと自分にこういった能力があればよいのに」「こういう強みがあればよいのに」と思うことはよくあります。そういった時こそ、仲間の強みや、力を存分に借りたら良いと思います。
誰にでもある、母性性や父性性の機能については、本来持っている機能バランスと、現在仕事で使っている機能が異なっているケースがあります。父親や母親から受け継いだものに気づかない、受け入れられない、また、生い立ちの中で、わざと蓋をしてしまったなどといったケースは、少し難易度が高い支援になります。まずは、蓋をしている事実を自覚し、「本当は自分の中にある」という機能を再認識し、なぜ蓋をしたのか、その理由や、意味づけを新たに置き換えることで受け入れやすくなります。
また、もっと開発したいと思う機能については、その機能を持っている人と一緒に仕事をしたり、チームを組むとで開発されるようなケースもありますので、自分と違う強みをもったメンバーとチームを組むこともお勧めします。
Q. 現在の自身の父性性と母性性のバランス(自身と他人からの評価のギャップも含め)はどうやったら認識できるのでしょうか。
A. 『全員参画経営』では、認識のための要素を5つ挙げていますので、その中で自分がよく使っているものが何かを見てみたらどうでしょうか。
人は機能バランスを場面場面で変えていることもあり、自分にある機能を自覚し、今どのくらいの割合でそれを使っているのかを考えてみることからスタートしてみるとよいかもしれません。
信頼できる仲間からのフィードバックが定期的にもらえると、より客観的に自分が見えると思います。私はよく、親、兄弟、親友、仕事の仲間、クライアントさんに聞いています。いろんな見方があるでしょうけれど、「どんな時にどんな機能を使っている?」「なぜそう思うの?」などを聞くと、他者から見えている自分を発見することができます。
Q. 父性性、母性性はどちらが良い、悪いというものではなく、誰しも両面を持っているものですが、そのバランスによって強みを活かした役割、ポジションがあると思います。自分にとっての強みを見つけるにはどうしたらよいか。
A. 小さい時に得意だったことや、お父さんやお母さんから受け継いだもの、自分が一番楽しかったこと、達成感があったこと、夢中になったことなどを思い返してみると良いと思います。スポーツなどで、どういった役割で活躍したかなども参考になります。また、人生の転機などで乗り越えた時の乗り越え方、まわりの環境などを振り返ると見えてきますよ。
Q. 女性の活躍と組織の活性化(繋がりの強化)はどんな関係性があるとお考えですか? 組織成長において女性のどのような特性が組織成長の要となるのでしょうか。
A.『全員参画経営』では、母性性機能という切り口で、5つの要素として提示しています。母性は“育む力”として組織をより成長させ強くする機能として重要だと書いています。2話にでてくる女性参謀の強みでもありますが、部門間の壁をするりと乗り越え、今まで誰も拾ってこなかった課題を取り上げ、人を繋げて解決する。立場や役割にあまり囚われないという性質もあり、組織課題を解決する時に母性性の強い女性の力はとても役立っています。
Q. 簑原さんは、数百社の企業風土改革を実現した実績をお持ちですが、「父性性」と「母性性」のどちらが足りない企業が多かったですか?
A. 母性性が少ない会社が圧倒的に多いですよ。
Q. 母性や父性という言葉自体に、違和感を感じるという意見もあるかと思いますが、この表現にされた意図を教えていただきたいです。
A. もしかするとジェンダー的に気になる人もいるかな、と思ったのですが、男性経営者も含めて、予想以上に受け入れやすかったようです。人間であれば、誰にでも両方あるものですし、両者のバランスがその人の特性になるのです。また、開発することもできます。人間には無限の可能性があるというベースがあったうえで、このような表現にしました。
■思考行動パターンについて
「全員参画経営」6つのステップ
「マザーシップデザイン」ステージ:経営者のマネジメント基盤づくり
ステップ1 自己認識力と自己受容力の向上
ステップ2 思考行動パターンの変容
ステップ3 めざす方向性に近づくための改革シナリオ創り「フォーメーションデザイン」ステージ:経営マネジメントの実践
ステップ1 ありたい姿と現状の認識合わせ
ステップ2 フォーメーションづくり
ステップ3 実践と振り返りの定着化
※「思考行動パターンの変容」は、「マザーシップデザイン」ステージのステップ2で行われる。
Q. 頑なに今の自分の考え方を「清流化」しない相手には、どのような関わり方が有効でしょうか。
A. 思考行動パターンの清流化は簡単なことではないのでとても丁寧にアプローチします。
なぜならば、その人が背負ってきた人生や生い立ちの中にある出来事が起因していることが多いからです。
徐々に自分で受け入れられるように、手離せるように、記憶の意味の置き換えをしていくことが大切ですが、「周りが自分を受け入れてくれているのか?」が気になり、手離せなくなることもしばしばあります。そのくらい、手離すことがアイデンティティをなくすことに近い人もいるのです。しかも、それは周りが支援するだけでは無理で、自分が自分で受け止めることが重要なのです。認知の歪みは、その人にとって自分を守る手段として使われているケースが多いですから、「これを認めても自分は大丈夫だ」と安心して手離せる環境をつくることが重要です。
■人の配置で留意するべき点
「全員参画経営」では、階層を活かしながら、メンバーが自発的にチームを組み、柔軟に運営される組織を目指します。
◇特徴
・個性や持ち味(強み・弱み)の尊重。強みが活用され、弱みは補い合う
・階層は存在するが、メンバーは柔軟に自発的に動き、経営に参画する
・リーダーシップは分散され、その時々に相応しい人がリードする
・組織と個人が対等でフラットな関係
Q. 関わる人々の特性や特徴を瞬時に掴む工夫、またそのためのフレームワークなどはありますか?
A. 瞬時に掴むことはさすがに難しいのですが、会話の中で少しずつ、その人の言葉の使い方や目線、行動、反応するポイントなどを見ていき、また丁寧に質問をしながら、情報の手がかりを見つけています。
Q. 取り組みを進める上でキーポジションになる人材発掘のコツ・目の付け所があれば教えてください。
A. 私の場合は、事業・人・組織の課題を明確にし、価値が高まるように、仕事の流れをうまく持っていくことを考えます。
まず、その課題に合った能力を持った人を探し出します。社員の方に聴いたり、直接本人に聴いたり。場の中のジブンガタリで、過去何をしてきたのか、得意技は何かなどをよく聴きながら、その人の想いの源泉を見つけ出し、会社の課題と重ね合わせるようなプロセスを作っていきます。
Q. 適切な人材配置がされていない環境において、自分やメンバーの中でうまくバランスを取るためのコツはありますか?実際には、常に人材配置が適切であることは難しいと感じたため、お聞きします。
A. 能力の配置とは、適材適所というより、「仕事の流れをシームレスにする。また、価値を高める為の連携がうまくいくフォーメーションをする」ということです。
流れにどう乗っているのかが大切なのだと思います。目的と目標を共有し、それを実現する為に、各々がどんな機能や能力を持っているか洗い出し、必要な機能やバランスとは何かを話し合うことが大切です。
優秀なメンバーを配置しても、必要な機能が明確になっていない、共有していない場合に多いのは、お互い不足を感じ、連携がうまくいかず、仕事の流れが滞っているケースです。
Q. 人の話を聞くときに、じっくり聞き、そこから「その人の人となり」を創造する力の付け方が知りたいです。
A. 「なぜ、そんな風に考えるのだろう?」「なぜそういった行動につながるのだろう?」と、その人に興味を持ち、丁寧に質問していくと、相手も心を開いて色々なことを話してくださいます。これを繰り返していくと、人間に対する理解が深まり、相手を理解する力が身に付きます。
※「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ―Q&A② ―改革をどう進めるか URL
※「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ―Q&A③ ―身近な疑問から考える URL
―簑原麻穂(Minohara Asaho)
スコラ・コンサルト プロセスデザイナー
泣く子も笑わせる関西出身。 JASに就職し、チーム連携と新商品開発による
顧客価値アップを実現したのち、JALとの統合プロジェクトにも参画。 リーダー育成や教育のしくみづくり、組織・システム統合、 新サービスの開発など組織の機能と マインド両面の変革を 要求される多数のプロジェクトに貢献。 その後、事業の成長と 人材と組織の関係をつきつめるべくスコラ・コンサルトの門をたたく。 積み重ねてきた幅広い経験から、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、 大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で磨いた感性が武器でリアリストでありそこはかとなくストイック。次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。 加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で 磨いてきた感性が武器で、 リアリストでありそこはかとなくストイック。 次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、粘り強い支援が特徴。経営者やリーダーの悩みや葛藤を受けとめながら、真の強みをとことん引き出す。その上で、事業をもう一段階成長させるために必要な要素を独自のバランス理論で見立てて、 人の持ち味・能力・経験の組み合わせで構築する。「組織の変革を成功させるために は、男女を問わず、人の強みを活かし合える環境が大切」。そこにある素材で最高の料理をつくる。
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