こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
今回は、未来から考えるということで、Netflixで人気のドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」というARという拡張現実の世界を描いた作品をもとに、編集部の磯尾さんと小林で、「AR/VRと出版の未来」について考えてみました。
1、AR/VRはどんな進化をして日常に入ってくる?
「アルハンブラ宮殿の思い出」というドラマは、「愛の不時着」など、ヒョンビンという韓国の人気俳優が主演で、AR=拡張現実がテーマとなっています。
内容は、拡張現実のゲームソフトを作る会社の社長が、天才的なプログラマーのARを使ったゲームを現実世界に持ち込んでいくという未来をテーマにしたストーリーです。
このドラマでは、ARのゲームの世界と実際の街が融合されているので、たとえば、あるお店に入ると、そこにはゲーム上の秘密の武器が隠されているので、大勢の人がトイレに駆け込むということが起こったり、動かない銅像がARのゲームをやっている人にだけは、動くように見えて、銅像と戦うことができたりするのです。
しかも、実際に接触する感覚や、斬られるときの感覚を感じたり、ARの装置も、ゴーグルのようなものではなく、コンタクトレンズのように簡単に装着できるもので、実際の街中でも、目立つことなく、違和感なく動くことができるのです。
2、AR/VR × 書籍でできることとは?
これは動画のフィクションの世界の中の話ですが、5年後、10年後には、テクノロジーが進化することで、現実にも実際に起こりえることだと捉えると、出版業界にとっても大きなヒントになるのではないかと思います。
かつて、テレビでも、VRゲームを使った事件を扱ったドラマがありました。その時に画面越しに見ていて思ったのは、VRの中の世界が現実に存在する場所なので、実際には行ったことがない場所でも、そこの場所をよく知っているかのような感覚に陥るな…ということでした。「まるで現実」なのです。
将来、VR/ARが出版物・小説とコラボレーションしたら、小説の世界に深く入り込むことができて、とても面白い体験ができるのではないかと思いました。
また、本を読みながら、AR・VRを同時に楽しんだり、VRを見ているときに、「ヒントはこの本に書いてあります」とか、ARを着用しながら街を歩ているときに、ある本が謎解き書になっていて、未知の世界のガイドブック代わりに使えたりとか……いろいろな可能性も感じることができます。
3、VR/ARが価値を提供する場所
VR/ARには、「あったら、面白い!」ということだけではない価値があると思います。
VRの世界が、かなり高いクオリティでリアルさを感じられる空間である、ということを考えると、今回の自粛のように、外に出ることが難しい期間のコミュニケーションにより活用できますし、または、外に出ることが難しい病気の方などにも、様々な疑似体験を提供できるのではないかとも思います。
こちら↓の「メンタルクライシスを考える」という動画では、見通しの立たなさや不確かさが、人のメンタルに影響を及ぼすという話と、戦時中、硫黄島のように、どんどん砲弾が落ちてきてずっと穴倉の中にいないといけないような状態だと、30日間で95%の人がメンタルの不調に陥るという話がされていました。
メンタルの不調というのは、3段階あって、
①身体に不眠・食欲不振などの症状が出る。
②負担を避ける、イライラする、余裕がない。
③別人化、自責・不安・無力・負担の状態。
という風になるそうです。
現在の自粛期間などでは、「楽しんではいけない」という風潮があるので、楽しいことができなくなり、②→③に陥りやすいのだそうです。こういった状況の中では、家にいながらも、「楽しいことができる」という意味で、VR/ARの活用の可能性が、さらに膨らんでいくのではないかなと思います。
4、AR/VRがあると、リアルが疎かになる?
「VRの世界が充実していくと、より一層、リアルを疎かにしてしまう人が増えるのではないか?」という懸念がよく言われます。
しかし、実は、それは逆なのではないかな?とも思います。
VRというのは、現時点の技術でも、たとえば、ジェットコースターに乗った体感などもかなりリアルに感じられるくらいになってきています。
VRが進化することで、今までのオンライン上の画面での会話というのとは違いレベルで、ヴァーチャルでもリアルに人に会ったような感覚でコミュニケーションがとれます。
VRで体験したことを通して、人は、現実世界においても、さらに体験価値を変えていこうと思考したり、リアルを活かす様々な新しいアイデアの創造にも繋がっていくのではないかと思っています。
また、VRを体験することによって、今まで使われていなかった部分の脳が活性化されていくという可能性さえ、あるのではないでしょうか。
5、映画の進化で自分が登場人物になれる
VRが進化して、自分がそのヴァーチャルの世界の中にさらに没入できるようになると、物語などで、主人公が体験したことをより深く追体験もできるでしょうし、別の登場人物から見た景色や感覚も自由に体験できるようになるのではないかと思います。
かつて大きなベストセラーとなった『冷静と情熱のあいだ』という小説では、女性からの視点を江國香織さんが描き、男性からの視点を辻仁成さんが描くというスタイルで話題になり、映画化もされました。
この小説のように、同じ出来事や物語を、複数の視点で観ることができるという面白さを、AR/VRを通して、様々なスタイルで実現していけるのではないかと思うのです。
VR/ARが生み出す未来には、本・活字といった、そもそも二次元的な世界が、少しずつ立体的になってくることによって、書籍における表現の幅や発信の仕方、ビジネスモデルさえも変わってくる可能性があるのです。
6、ライバー×AR/VR
数年前から、Youtuberよりも、より気軽に編集をしないで配信する「Liver=ライバー」という層の方たちが登場してきているようです。
彼らは、SHOWROOM(ショールーム)、17Live(イチナナ)、Pococha(ポコチャ)、ツイキャス、などのプラットフォームを通して、簡単に、積極的に、ライブ配信をしています。
YouTubeとの違いとして、リアルタイムで寄せられたコメントを読んでライブ配信者とやりとりが楽しめるだけでなく、投げ銭形式で応援できるという点もあります。
ライバーという分野も、AR/VRという技術が掛け合わされることで、さらに面白いこと可能性が拓けてきそうです。
たとえば、ヴァーチャルでは、実際の自分とは全く別の、しかし超リアルに感じられるキャラクターとして存在したり、投げ銭の形式や見せ方が変わったり、応援の仕方が変わったりなど、実際に生きている世界と、ライブ配信をしている世界という全く別の2つの世界を、同時並行的に生きるというような新しいライフスタイルも誕生してくるようになるかもしれません。
7、発信者と受信者の境界線がAR/VRの進化でよりなくなる
これから、ますます、皆がより個性を活かして発信していく時代になるという時流を考えると、ライバーのような気軽な発信媒体は、さらに人気になっていくのではないかと思います。
その流れに、AR/VRの掛け合わせが加われば、視聴者参加型のライブも、どんどん増えていきそうです。
書籍に置きかえて考えてみると、AR/VRの掛け算により、たとえば、自分の好きな小説の中に自分が登場するといったこともできるようになるのかもしれません。
このように、AR/VRの進化は、誰もが表現者であり、発信する者と受信する者の境界線が曖昧になっていくという今の流れを、さらに進めていく一つの大きなきっかけになっていくのかもしれません。
未来に起こるであろうテクノロジーの進化を想像することで、出版社/出版のミライがどんどん広がっていくことを感じます。
エッセンシャル出版社でも、テクノロジーの進化の先に創造される「面白くて、楽しくて、豊かな未来」を見据えながら、出版という分野で、引き続き、新たな試みをいろいろ考えていきたいと思います。