得るのは「お金」だけ?―人生をもっと楽しく。“複“業という選択肢

複業–「副業」のように、本業に対して「副」の位置にあるのではなく、どの仕事も並列に同じように扱うことを言います。「副業」は主に収入を得ることが目的ですが、「複業」ではお金のみならず、自己実現を目指すことが視野に入ってきます。人生をより豊かにするために―「複業」という選択肢を。今回は「誰にでもできる複業」を掲げ、そのエバンジェリストとして活躍する中村龍太さんによる「年代別複業のポートフォリオの組み方」をご紹介します。

龍太流複業とは?

副業がまだ珍しかった2012年、副業を解禁したサイボウズ。そのサイボウズとダンクソフトに同時に転職をし、「複業」の先駆けとなったのが中村龍太さんです。「子どもの教育費」のために成り行きで始めたものでしたが、それぞれの仕事が関連して、自分のスキルやあり方に相乗効果をもたらしていることに気づきます。これをきっかけに、「副業」ならぬ「龍太流複業」が生まれました。

一人1つの会社だと誰が決めた!マルチワークから考える自分らしい生き方

具体的には

金融資産(お金)…自由に利用できる、現金、貯金、不動産などの財産

人的資本(スキル)…労働者が有する生産に有用な、労働、知識、技能などの能力

社会資本(つながり)…人と人との信頼関係(友人、知人、人脈など)

これらを元手に資本・資産を再生産しながら、より豊かな生き方を目指すというもので、これらを再生産しながら手にした中村龍太さんの複業は、この2社での仕事のほかに、

・奥さんの実家での農業

・趣味で始めたドローンで撮影の仕事

・好きなパエリア料理の作り方を教える仕事

と多岐に渡っていき、その再生産は、いまでも続いています。

龍太さんがお薦めするポートフォリオの作り方

自分のポートフォリオを考えるにはまず、金融資産(お金)・人的資本(スキル)・社会資本(つながり)この3つの資本・資産が存在することに気づくことが大切です。また、資本・資産の再投資をするために、これら3つのインカムを手にすることを楽しんでいきましょう!

[20代の組み方] ※会社に就職した場合

入社したてでの資産の想定モデルを上げてみます。

金融資産(お金)▷学生時代に貯めていた貯金が少し人的資本(スキル)と社会資本(つながり)▷ほとんどなし。

わずかな金融資産をともなって…ここからのスタートです。

自分の体力とこれまでに培った知識を元手に、会社で必要な知識を得るための新人教育やOJTを受けることで「人的資本(スキル)」の積極的な構築を開始!また、会社の同僚や部署のメンバーとの仕事を通じての関係づくりなどで、「社会資本(つながり)」の構築も始めましょう。就職した会社に集中投資して、会社で将来の信頼を勝ち取るために必要な社会資本を育みながら、別の人的資本も育むのが理想です。

※20代が活かすべきもの–時間

個人差はあるものの、他の年代に比べ絶対的に時間があるものです。この時間を使っておすすめしたのが、この低金利時代、50年先を見越しての「金融資産への投資」。個人型確定拠出年金(iDeCo)や、国際分散投資の投資信託などがおすすめです。

POINT

1.社会資本は入社した企業でいったん集中投資。そこで人的資本も育む。

2.無理をしない自然な関心に基づきながら、ポートフォリオを育む

3.金融資産は圧倒的な「時間」を武器に、早期少額投資がオススメ


[30代の組み方]

今までに得た人的資本(スキル)と社会資本(つながり)で、複業を経験すすることができる年代です。自分の資本が会社以外の社会で価値があるかを試しておくのもひとつの手です。もし「兼業・副業禁止」の会社に所属しているならば、ボランティアやサポーターなど、「ありがとう」をもらえる複業を。

たとえば育児は、お金がもらえるわけではありませんが、子育てを学ぶことは人的資本(スキル)を得ることにつながり、子どもの通う幼稚園では、パパ友、ママ友という社会資本(つながり)を形成することも可能です。「いま」でなく、「将来」、資産を再生産するための元手をつかむことができるのです。

30代での3つの資本・資産を見てみると…

人的資本(スキル)…所属会社で有効なスキルは増えているはずです。しかし、10年もその会社にいると、できて当たり前、できなかったら文句を言われるという環境になりがちで、モヤモヤしながら働かざるをえなくなることが多くなります。そこで、会社以外の人との交流や自分の趣味にコストを掛けて、ストレス解消をして健康という名の人的資本(スキル)を維持することにも注力!

社会資本(つながり)…会社や会社を通じた社会資本の構築の経続をしましょう。

金融資産(お金)…特別何をしなくても、会社の基本給は上がっているはずです。

Point

1.社会資本と人的資本は、20代で貯めた資本を使って再生産していく

2.育児もボランティアも立派な複業。社会資本と人的資本が育める

3.子どもが産まれるまでに、金融資産をためておくのがオススメ

[40代の組み方]

20年間貯めてきた3つの資本・資産を、会社や居住などの環境を変化させることで相対的に大きくしながら、お金も含めた3つの資本・資産のポートフォリオの実績を作っていく時期です。

30代までとは違い、自分のできること、これからしなければいけないことを考える「選択と集中」をすることが、龍太さんのおすすめです。

「選択と集中」の際に必要なことは、資本・資産の再生産のメカニズムよりも、環境に目を向けることです。

例えば、転職サイトに登録するだけでも、「自分の価値を判断する」ことができるし、転職をしたくない場合には、複業をすることもできます。

また、暮らしの環境を変化させることも一つの手です。

例えば、いまの会社から通勤可能な田舎に引っ越しをすること。自然が多い田舎では、健康という名の「人的資本(スキル)」が安定もしくは増収します。また、「社会資本(つながり)」が家族と接する時間が増えることで強化され、地域との繋がりで新たに構築することもできます。さらに物価が安いことにより、給料の価値が相対的に上がるという「金融資本(お金)」に対するメリットも。引っ越しは大変。でも、3つの資本を増やすことができるのです。

Point

1.20年間貯めてきた3つの資本・資産を再生産しながら「選択・集中」する

2.仕事や暮らしの環境を変えて、自分の資本・資産の価値を確認する

3.お金も含めた3つの資本・資産のポートフォリオの実績を作っていく

[50代の組み方]

健康第一。いま50代になった龍太さんは、夜に人と会って「社会資本(つながり)」を増やす時間を減らし、その代わりに30分歩き、「人的資本(スキル)」の増進に努めているそうです。

50代に必要なことは、20代から育んできた3つの資本・資産の再確認をすることです。

・金融資産(お金)…銀行の普通預金、定期預金、年金、退職金、確定拠出年金、生命保険証券商品、不動産など、金融資産のリストアップを。

・人的資本(スキル)…ひとつの会社で培った知識・技能、転職や複業で貯めた知識・技能などを書きだそう。暮らしの中で育まれる趣味やその知識・技能も含めます。

・社会資本(つながり)…親、兄弟、幼児期、小学校、中学校、高校、大学―学生時代の関心・つながり、会社や気の合う仲間、コミュニティーのメンバーとの関心とつながりなど、どれくらい多様な人たちと、関心とつながりを持っているかを確認しましょう。リアルだけでなく、オンラインでの繋がりも忘れずに。

以上の資本・資産の確認が済んだら、会社や住居などの環境が変わった時を想定して、資本・資産が再生産できるものになっているかを考えておきましょう。また、今後を想定した際に、足りないと思われる資本がある場合は、それらを再生産しておきます。

以上の年代別のポートフォリオは、必ずしもその年代で行う必要があるわけではありません。100人いれば100通りの人生・働き方があるものです。自分の見立てで、自分だけのポートフォリオを、楽しみながら構築していきましょう!

お金、スキル、人との繋がりを増やすニューノーマルな働き方

 

―中村龍太( Ryuta Nakamura )

中村龍太さん_250

1964年広島県生まれ。日本大学卒業後、1986年に日本電気入社。1997年マイクロソフトに転職し、Office365などいくつもの新規事業の立ち上げに従事。2013年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。さらに、2015年にはNKアグリの提携社員として就農。現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークスのポートフォリオワーカー。2016年「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で副業の実態を説明した複業のエバンジェリストとして活躍中。中村龍太・講師プロフィール▷コチラ

中村龍太(著)『多様な自分を生きる働き方 ー誰にでもできる複業のカタチー

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