わが子らしさの見つけ方
5万組以上の親子を見てきた花まる学習会の代表 高濱正伸さんとラグビー界で「コーチのコーチ」として活躍する中竹竜二さんの人育て=子育て論を見ていきます。
■中竹竜二さんの主張off the fieldで子どもを伸ばす親の6カ条ーその子らしさを見つけて認める
自分らしさが確立されると、何事にも能動的に取り組むようになります。でも、自分らしさというのは自分では案外見つけにくいものです。ぜひ親子で一緒に見つけてほしいと思います。
さて、何かのときに、「あ、うちの子らしいな」と思うのは次のうちどれでしょうか。
●臆病だ
●コツコツと頑張っている
●おちゃらけている
●みんなのあとをついていく
●最後の最後で失敗しちゃう
●食いしん坊
●背伸びしてしまう
●本番に強い、あるいは弱い
●要領がよくて、努力をあまりしていないけどできちゃう
●自分勝手
●1番じゃないと気が済まない
これらはすべて、「その子らしさ」です。その子が持つ、本質的かつ一貫性のある個性なのです。ここで一つ言っておきたいのは、それを「良し悪し」で語るのはちょっと違うのではないかということです。
「らしさ」に良し悪しの視点を入れない
一般的に「よくない」と判断されるようなその子らしさであったとしても、それすら大切にすべきだと私は思うし、より強烈に発揮されたほうがいいと考えます。
もしかすると、それは「自分勝手」に見えるかもしれません。でも、それがその子の持つ本質なのですから、その「らしさ」が発揮されて然るべきだと思うのです。そして、その「らしさ」が存分に発揮できてこそ、本当の意味での「多様性が認められる社会」だと私は思います。
今後は多様性を認め、また求められる社会になることは間違いないでしょう。国や文化が違う相手の多様性を認めるためには、まずは自分らしさを知っておかなくてはなりません。これからの時代を生きる子どもたちには、ぜひ「自分らしさ」を見つけてほしいと思っています。
そのために親ができることは、思い込みを捨てることではないでしょうか。「長男だから◯◯」とか、「お友だちはみんな〇〇だから」とか、そうした思い込みや決めつけをしないことです。
親は、無意識に押し付けていないか、確認を。
親は自分の子どもに対して、親自身が考える「自分らしさ」を押しつけやすいということがあるはずです。きょうだいに対して、「遺伝子が一緒なんだから、同じようにできて当たり前」と思ってしまうのも同じです。成長のタイミングが同じ人は一人としていないのですから、その点を親は本気で考えてみる必要があると思います。
では、実際に「その子らしさ」を見つけるにはどうしたらよいでしょうか。
お子さんを見ていると、好きな科目や自分から始めた習い事には喜んで取り組んでいるなあと思うことがあるはずです。大好きな遊びは、「やりなさい」と言われたわけでもないのに勝手に熱中するのです。
かと思えば、テストがあるから勉強しなくてはいけないとわかっているのに、気が乗らない科目があったり、親が本人のためにやらせたいと思っていても、当の本人が「やりたい」と言ったわけでない習い事には身が入っていないと感じたり……。
「やりたい」と自主的に取り組んでいることは、イヤイヤやっていることよりも習得が早い。それは大人も子どもも関係なく同じです。まずは「好き」なこと、言われなくてもやっていること、そういったことは何かを知ることが、その子らしさを見つける第一歩だと思います。その「好き」なことの延長線上に、お子さんが自信を持てることがきっとあると思うのです。
親子でも、きょうだいでも、似ていても「らしさ」はそれぞれ。
「自分らしさ」を大人になっても見つけられない人がいます。そういう人の多くは、他者評価に依存しています。他者評価に依存する人は、自分のいいところ、得意なことを自分自身の物差しで測るのではなく、他者に認められたことで認識する傾向にあります。そうではなく、自分らしさというのは誰に評価されなくてもやっていることの中にあるはずなのです。
褒められたから好きだと思っているのか、褒められなくても自信を持っているのか、そこを見極める目が問われます。
また、その子らしさを見つけるときにもっとも注意したいのが、「わが子のことはよく理解できる」という思い込みです。親子だから似ているところがあるのは当然。でも、それがすべてではありません。
他者の思い込み・常識から出る何気ない一言で、思い込みは刷り込まれる!
まずは、ステレオタイプに起因する思い込み。長男だから、末っ子だから、A型だから、男の子だから、女の子だから、背が高いから、低いからというものですね。
そうした一般的な価値観から生まれる「〇〇らしさ」という思い込みからは、なかなか逃れにくいものです。誰もが、「男の子らしく」、「女の子らしく」、「リーダーらしく」といった言葉を使ってしまうことがあると思います。この社会的な常識や肩書からくる「らしさ」を押しつけることは、その人の個性を見失わせるリスク要因の一つです。
人が、このようなステレオタイプで物事を判断しがちなのは、ある意味、「自己防衛」の意識が働くからなのだそうです。毎日あまりにもたくさんの情報に触れるので、世間的な価値観に照らし合わせたり、今までに出合った似た事象に当てはめたりすることで、間違いの少ないように情報の取捨選択をしようとするからだそうです。
それから、「自分だったらこうする」という、自分の経験に基づく思い込みもあります。「自分はストレスを感じないからこの子も大丈夫だろう……」知らず知らずのうちに、このような考え方をしていないでしょうか。
■高濱正伸さんの問題提起わが子が夢中になることに、生産性に繋がる価値を求めすぎている
わが子らしさを見つけるというのは、この本の中で最も重要なテーマだと思います。
たとえば、社会人の青年に、「自分は何をしたいのかわからない」という壁について相談を受けたとします。彼はいろいろなことをやらされて生きてきて、自分の軸を見失っている状態なのです。そうしたときに必ず聞くのは、「小さい頃、本当は何が好きだった?」ということです。それは虫取りかもしれないし、消しゴムのカスを集めることかもしれないし、好きな本を読みふけることかもしれません。そこが常に立ち返る場所なのです。わが子が本当は何に興味関心があるのかを見失わないということは、子育ての芯とも呼ぶべき項目でしょう。その子らしさを見つけられないというお母さんは、ありもので選びます。自由に絵を描いているのが好きであれば、それでよいのです。気をつけたいのは、子どもが行動で表しているのに、お母さんが無駄だと思ってしまって見落としがちなことです。「そんなの面白いの?」「変わっているね~」と言われるものが大半なのです。
■高濱正伸さんから親への解説!ここを活かして!
まわりから見ると決して褒められたものではない「自分らしさ」 を貫くことは、容易なことではないと思います。しかし、書かれている通り、それは人生の神髄とも言うべきもので、この場合、 力になるのはたった一人誰か、「そのままでいいよ」と認めてくれる存在がいるかどうかだと思います。ここにコーチというものの存在の価値が確かにあるのでしょうし、親が子どもに果たせる大切な役割を教えてくれます。
型破りなキャプテンとともに学んだ1年という中竹さんのエピソードが、心に響いています。記事はコチラ↓↓
▽社会の常識から外れたことも「自分らしさ」と認められますか?
―『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』より抜粋・編集
※対談で高濱正伸先生が登場します!
◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。
また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。
改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。
“サンドウィッチマン推薦! ”
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」
▽出版記念講演会
9月15日(火)中竹 竜二 × 高濱 正伸「子どもを伸ばす親の6ヶ条」【Zoomライブ配信】
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。
2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。
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▽子どもが伸びるのは、塾でもスポーツ教室でもない!カギは”オフザフィールド”
▽空白の数年間…期を待てるか?
▽流行・数字に惑わされない、わが子を伸ばすのに必要な”目”
㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。 |
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