5万組以上の親子を見てきた花まる学習会の代表 高濱正伸さんとラグビー界で「コーチのコーチ」として活躍する中竹竜二さん。「人を育てる」プロのお2人が、書籍で初のコラボを実現!その人育て=子育て論とは?
■中竹竜二さんの主張タイミングと状況を考えて、リーダーが変わるべき
今は、「リーダーになれる人が素晴らしい」というような言われ方を社会ではしています。でも、私はリーダーの定義は自分たちで決めたほうがいいと思っています。世の中のリーダーの定義ではなく、自分の組織を見て、タイミングや状況を考えて、どんなリーダーが必要なのかを考えるべきだと思うのです。
▽リーダーの定義は、自分たちで決める!〜全員がリーダーになる必要がある時代
時代とともにリーダー論は変わってきました。最近はマルチリーダー制が成功するとわかってきて、スポーツ界でも導入が顕著になってきました。今回のラグビーでは、 31名の公式枠中8人がリーダー(という役割)だったことがその一例です。
全員リーダーでもOK!キャプテンが控えでもOK!リーダーはただの役割!
これだけのリーダーがいるため、ある試合ではキャプテンが控えに回るということがありましたが、そのことに誰も違和感がありませんでした。時代背景として、「リーダーになりたくない」という人も増えています。なぜリー
ダーになりたくないのか。それは責任を持たされるのがイヤだからです。
そう考えたとき、リーダーは責任ではなく「責任感がある人」でよく、それが何人いてもいいし、全員がリーダーでも構わないと考えることができます。リーダーとは「役職」ではなく「役割」の名称に過ぎない。それは能力も役職も関係なく、心がけ次第でできることです。
リーダーらしさも多様性!
オーセンティックなリーダー、自分らしく誰のマネもしないリーダーがいるチームや、非公式なリーダーがいるチームは強いです。リーダー、副リーダー以外に、役職はないけれど、必ず「あの人は、リーダーだよね」という人がいる。全員がそんなリーダーになればいいと思うのです。
リーダーというのは、常に最高の場所にいることを望まれるものです。でも、キャプテンだって調子の悪いことがある。実際に今回のワールドカップで言えば、「本当のリーダー(キャプテン)が最後の 10分にコートに立っていないと勝てない。だから今は控えでいてくれ」と、監督がキャプテンに伝えた試合もあったようです。
実際にそうなることを予言していたわけでなく、そういう考え方をして全員が前向きにプレーをしたほうがいいという考えでそう伝えたようですが、実際にそういう展開になりました。しかし、リーダー役のみんなが、リーダーとして一選手として頑張ってくれた。そのため、キャプテンは一プレーヤーとして、試合に出ない時間をフォロワーに専念することができたのです。
チームはリーダーが作るのではなく、みんなで作る!
「チーム作りは一人じゃできない。リーダーが作るのではなく、みんなで作るんだよ!」と常々言ってきました。その結果、一人ひとりが「自分がリーダーだ」と思うようになったのです。「自分が引っ張るんだ!」もしくは、「自分が支えるんだ!」ということが、私のリーダーの定義ではありません。全員がリーダーシップとフォロワーシップを持って戦う。全員が「リーダー」であるべきなのです。
私の定義による「リーダー」は、「責任」ではなく、「責任感」を持っている人です。だから、新入社員とかインターンシップの子でも、全員がリーダーになることができます。責任感なので能力に関係なくできるのです。
一番厄介なのは、責任はあるけれど責任感がない人。そういう人がリーダーだと「他責」の空気が流れてチームが揺らいでまとまりません。何か問題があったときに、直接関わってはいないけれど、「なんとかしなきゃ!」と思える人には「責任感」があります。他責ではなく、常に自責として考えられるリーダーがたくさんいるチームは、自ずと強くなります。
■高濱正伸さんから親へ!ここを考えて!多様性の時代、リーダーのあり方も多様になっていきます。
今回のワールドカップについての中竹さんの話を聞いていて、一番驚いたのがリーダーグループのことでした。
私の頭の中にある「リーダー」のイメージが、実はとても時代遅れで、新しい組織論の時代に入っているということは大変学びになりました。
所属員が幸せか、成長しているかが一番大切だとすると、正解は一つではないし、多様なリーダーのあり方があってよいのでしょうね。
―『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』より抜粋・編集 ※対談で高濱正伸先生が登場!
◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。
また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。
改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。
“サンドウィッチマン推薦! ”
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」
中竹竜二(著)『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』
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▽出版記念講演会
9月15日(火)中竹 竜二氏 × 高濱 正伸「子どもを伸ばす親の6ヶ条」【Zoomライブ配信】
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『挫折と挑戦 壁をこえて行こう』(PHP研究所)『新版 リーダーシップからフォロワーシップへ
カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス