【エッセンシャル出版社の考える「出版のミライ」⑩】
情報として数値を出すことで、何も言わなくても、見た人が自然とその数値を意識して、より良いとされる方向にもっていこうとするという効果があります。だから、「”数値”を積極的に使おう!」というビジネス論もありますよね。
ただ、今回は、その数値を見ることによって、逆に、陥りやすい側面について考えてみます。
こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
私が、”本づくり”をしていく上で、日々、どのようなことを考え、どのような目的で本をつくっているか、記事風に残していきたいと思います。
【プロフィール】
大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/
先日、絵本の学校の審査員をしました。この学校のコンセプトはとてもユニークで、学校の中間発表として、生徒それぞれが、まだ完成していない企画段階の自分の絵本企画についての発表会を行い、そこで審査員や聴衆からのコメントを参考に、企画をブラッシュアップしていき、さらに後半の授業を受けながら、作品をつくりあげていくというものです。
発表会に参加された生徒の方々は、それぞれがオリジナリティのあるコンセプトで、発表も上手、企画内容もよく練られていて、本当に素晴らしい種から芽が出ていたので、ここから更にいい栄養をとり(授業を受け)、いい花が咲く(絵本ができる)のが楽しみです。
そして今回、一緒に審査員として入った編集者の磯尾さんが、”本の制作”ということを客観的に見て、気づいたことがあったそうです。
それは、本を制作していくときに、いろいろな視点を持ち、「構成」も「作画」も「物語」も「コンセプト」など、全て総合的により良くしていこうと思いがちですが、実際には、案外、そういう本は「弱い」という事実です。全部、総合的に良いのだけれど、それよりも、たとえ他の要素が弱かったとしても、圧倒的な一点がないと、「誰にも刺さらない」のではないかという点です。
人が書籍を購入するときに考える視点を分析して考えてみます。
たとえば、組織の構造について課題を持っていて、それを解決するために本を探しているとします。
・具体的に想定されていて、自分が実践できそうな内容がありそうか?
・「あ~知っている」というのではなく、新しい視点が知れそうか?
・自分にとっての読みやすさがあるか?
…etc
どんなことを基準にしてもいいのですが、書籍を購入する際には、自分が大事にしている基準の中で、1位の本を買うのではないでしょうか。
たとえば、文字より図などで構造を理解する方がイメージできるという人がいたとします。同じテーマで、■文字だけの本、■一部が太文字になっている本、■図も入っている本があったときにどれを選ぶか?と考えると、「図が入っているもの」になると思います。
つまり、自分が知りたいテーマの本の中で、何か一部分で1位にならないと、本を購入する選択肢としては、まず選ばれないのです。全ての項目が2位、3位で良書だとしても、なかなか選ばれることがなくなってしまうのです。
どこかの要素・特徴でNO.1であること、1位になっているということ、圧倒的な一点があることが重要になるとは、そういう意味合いなのです。
エッセンシャル出版社の本の中で、「タイトル」という視点で考えてみると、『小3までに育てたい 算数脳』という書籍や、『学校は行かなくてもいい』という書籍は、読んでいただく対象を明確に絞った本です。
たとえば、『学校は行かなくてもいい』という本であれば、もちろん学校に行った方がいいと考えている方にも視野を広げるという意味では読んでほしい本です。でも、『学校は行くべきだけど、行けないときがあってもいいと思う』といったタイトルだと、主張が伝わりにくくなっていたと思います。
この書籍は、類書と呼ばれるような本としては「不登校を直す」系の本が並ぶ中で、反対の主張である「行かなくて”も”いい」というタイトルにしたことによって、反対の視点を持ちたい人には、Only 1の本(他の類書と比べてテーマ的に1位)という位置付けになったことが、ベストセラーになった一因なのではないかと思います。
(まとめ)
音声配信で収録している「ミライ会議」でも、改めて「総合点をあげるのではなく、一点突破」について、今後も考えていこうと思いました。
エッセンシャル出版社の個性、一点突破する場所はどこになるのでしょうか?さらに思考を深めて、考えていきたいと思います。