人の凹凸を認められる人は、自分の凹凸もさらけ出せる

これからの時代、ますます多様性が認められる社会になっていき、今まで「自分らしさ」を出さないようにしていた人たちも、「自分らしさ」を出すことが求められていくでしょう。同じ、□と□の部分を組み合わせるより、それぞれ違う、凹凸をうまく組み合わせる方が、より強いタッグが組めるチームができるという考え方は、さらに大切になっていくのではないでしょうか。

今回は、「自分の凹凸を認識し、さらけ出す」という視点を考えていきます。

■CROSS VIEW「自分の凹凸をさらけ出す」

“自分の凹凸をさらけ出す”という点について、『オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者であり、ラグビーのコーチを教えるコーチをしている中竹竜二さんと、「パートナー力」という考えをお持ちの花まる学習会の代表、高濱正伸さんの視点を掛け合わせて、クロスビューしていきます。

1 自分らしさに良し悪しはない

中竹竜二さんは、「自分らしさに良し悪しはない」ということを体現されている「コーチを教えるコーチ」です。

人が自然と伸びるリーダーができること~社会の常識から外れた「らしさ」も認める

社会の常識から外れたことも「自分らしさ」と認められますか?

全てを、自分らしさ、その人らしさと認められる人の特徴として、「自分自身の凹んだ部分を認識し、さらけ出せる」という点があるのではないかと思います。

中竹さんは、ご自身の経験をこのように語られています。

自慢ではありませんが、私はたくさんの失敗をしてきました。まず早稲田大学ラグビー部監督になった1年目、大学選手権の決勝戦で負けました。そのときは、「私のせいだ、中途半端だった」と思いました。その反省もあって、2年目からは1on1(ワン・オン・ワン/定期的に一対一で話し合うこと)を格段に増やして、選手たちの話をじっくりと聞くことに徹しました。特定の選手だけではなく、スタッフを含めた全部員とです。人はそれぞれの可能性を持っているので、その人なりの力を出してほしいと考えてのことでした。

思い起こせば、前監督は強烈なリーダーシップでチームを引っ張っていました。そこから突然、「自分たちで考えて!」というスタンスの監督に変わったわけですから、就任1年目は難しい部分があったと思います。なにしろ、自分で考えることを求められなかった人間にいきなり考えろと言ったって、それは簡単なことではありませんから。そのお膳立てが自分にはちゃんとできていなかったな、という反省がありました。そういう思いが強くて、1年目で負けたときには、人目もはばからずに初めて泣いて謝りました。

2年目は覚悟を決めなきゃいけないと思い、相手の話に耳を傾けながら、自分からも要望を出すようにしました。

「私は、いわゆる監督としてはまったくの素人でダメな監督だ。しかし、選手であるみんなを信じて、任せて、一緒に成長していく気持ちは誰にも負けない。だから、君も背伸びをせず、自分らしく一緒に成長してほしい」

そんなふうに、ひたすら言い続けました。そうしたら、選手のほうがどんどん成長して、最終的には「俺たちが監督を胴上げしてやる!」となりました。

面白かったのは、監督就任3年目に私がメディアから叩かれた時期があって、私ではなく選手たちが、「メディアごときに言われたくないよ」と怒ったことです。

彼らは普段から私の悪口をたくさん言ってるんですよ(笑)。それなのに、「オレたちが言うのはいいけど、あいつらに言われるのは腹が立つ。こうなったら監督を勝たせてやろうぜ!」という発言が出たんです。そのときに、「あ、これってチームだな」と思いました。

私は、背伸びせずよかったなあと思いました。正直、1年目は選手たちとそこまで深い関係性を築くことはできませんでした。2年目に優勝したときには、1年目をともに過ごした選手たちにひたすら感謝しました。1年目の経験があってこその優勝だと。

相手を信頼できるのであれば、恐れずに自分らしさをカミングアウトしてみたらいいと思います。

『どんな個性も活きるスポーツ ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』中竹竜二著

コーチ、監督という立場でなかったとしても、チームメイトや相手を信頼しているのであれば、恐れずに自分らしさをカミングアウトすることが、相手の心も開く大きな一歩になるのではないでしょうか。

この点については、「教えない先生」として、全国から視察が殺到するカリスマ教師、『いま、ここで輝く』の主人公である井本陽久先生も同じように仰っています。井本先生は、「自分自身は、かばんのチャックはほとんどいつも開いていて、忘れ物も多くて、典型的にお母さんが口うるさく子どもに言っていたことを残したまま、大人になっている」ような先生です。

僕は子どもの頃から、「変わっているね」「ちょっと変だね」と言われると体の芯から嬉しくなるタイプでした。小学校の頃は本当に「やっちゃダメ」と言われることを絶対にやりたくなってやってしまうような子どもです。

落ち着いて座っていることもできず、片付けもできず、それを通知表に書かれるとまたそれが嬉しい。外で友達と遊んでいると、その子のお母さんが来て、「コラッ、はるくんと遊んじゃダメって言ったでしょ!」と言って連れて帰ってしまう。

購入はコチラ▷Amazon

井本先生の自分のありのままをさらけ出している様子は、井本先生が出演され、大きな反響を呼んだNHK番組「プロフェッショナル・仕事の流儀」でも垣間見ることができます。

2  強烈な凹凸、個性があるからこそ強いチーム、パートナーになれる

花まる学習会の高濱正伸先生は、重複障害の息子さんをおもちで、津久井やまゆり園の事件のときに、犯人が言った「障がい者は必要ない存在だ」という発言について、深く考えられたそうです。

各種メディアを見ても、結局、納得のいく意見はなく、高濱先生は考えに考えた末、「パートナー力」という結論に至ったと言います。

 

「テレビ寺子屋」という番組では、このように述べられていました。

私の息子は重複障害を持っていて、一人で何かを成し遂げる力はありません。

私は10年余り、非常に真剣に子どもの面倒を見てきました。私自身は大学受験で三浪し、大学院を卒業するまで四年留年しています。29才まで真面目に物事に取り組んだ覚えがありません。面倒を見てあげなければ生活できない息子の存在が、そんな私に真面目に生きる姿勢を教えてくれたのです。

障害を持つ人がその人単体で能力を発揮できなくても、親や周りの人と組む事によって影響力を持ち、人を動かし、大きな力となる事があります。

これを私は「パートナー力」と呼んでいます。

https://www.sut-tv.com/show/terakoya/backnumber/post_428/

テレビ寺子屋HPより抜粋

高濱先生にとって、息子さんは「凹んでいる部分」をさらけ出して、生きている存在なのかもしれません。だからこそ、一緒に強いチームを作っていけているとも言えそうです。

(まとめ)

画像2


■相手をまるごと承認するためには、まずは自分自身の”凹凸””らしさ”を認める

■自分の凹凸、らしさをさらけ出す。勇気をもってチームに共有する

■この状態でこそ、やっと相手を丸ごと承認できる

■相手は伸ばされるのではなく、勝手に伸びていく

「これからは多様性の時代」と言われることに、多くの方は異論はないと思います。しかし、多様性を大事にしようと言いつつ、「普通に、普通に」、「角が立たないように、角が立たないように…」という思いから抜け出しにくいのも、また、事実だと思います。

凹凸がある方がチームを組みやすい、強烈なタッグを組みやすいということは、私たちにとって、大きな勇気になります。そして、「弱さをさらけ出せることが一番の強さ」という言葉も生かして、自分の凸凹をさらけだすための一歩を踏み出してみれば、きっと、違う景色が見えてくるかもしれません。

人が自然と伸びるリーダーができること~社会の常識から外れた「らしさ」も認める

【参考著者】

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

スクリーンショット 2020-07-29 21.19.59

株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。

著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。

◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆

本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。

教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。

さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。

改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。

“サンドウィッチマン推薦! ”

ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。

「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」

購入はコチラ▷Amazon

相手が変わる唯一の方法

 

子どもを伸ばす言葉のマジック~言葉で人生は大きく変わる

㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

(株)エッセンシャル出版社
〒103-0001
東京都中央区日本橋小伝馬町7番10号 ウインド小伝馬町Ⅱビル6階
TEL:03-3527-3735 FAX:03-3527-3736
公式 : https://www.essential-p.com

関連記事