本日のミライ会議は、社会派ブロガーのちきりんさんのVoicyをもとに、最近の「BOOK OFFや地域の書店事情」から、出版のミライについて、編集部の磯尾さんと小林で、考えてみました。
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本の転売は、BOOK OFFであろうとメルカリであろうと、出版社や著者には基本、直接的な利益になるものではないので、喜ばしいものではありません。
しかし、ちきりんさんには、BOOK OFFは過去に売れた本が並ぶというイメージがあり、新刊が並べられる書店とうまくすみ分けられているのではないか、また、書店がない地方ではBOOK OFFが書店の役割もしているので、BOOK OFFで自分の本が売られていることに、そこまで嫌な気持ちにはならないということを仰っていました。
そこから、出版社として考えたことは、本屋さんが無くなってしまったようなエリアへ、どのように書店的な価値を届けるべきかということでした。
確かに、「本屋さんが無くなってしまったエリアの学力や文化レベルは下がってしまう」という話を聞いたことがあります。
目次
■図書館の役割
その視点で捉えてみると、全国の地域にあり、公共の施設である図書館が、より充実していくことが大切なのかもしれません。
磯尾さんも私も、小さいころに、図書館で多くの本を借りた経験があります。「自分で買った本以上に、たくさんの本に出合わせてくれた」場所が図書館でした。
「本はいくらでも買ってあげたい」と思っている親でも、毎日2冊、3冊の本を平気で読んでしまうような子だと、家計ももたないし、本を置く場所を確保することもままならないということは往々にしてあると思います。
地域に図書館が存在している価値というのは、そういうところにもあるのではないかと思いました。
ただ、今の図書館が、本に関しての価値を測る基準としては、「貸出の冊数」がメインとなっていることも多いようです。そのため、図書館はベストセラーになるような需要の高い書籍を何十冊も購入し、それを貸し出すことで、結果、貸出数を増やすこともあるようです。ある意味、住民からのニーズやリクエストの多い書籍を用意するのは、仕方がない側面もありますが、ベストセラー的な書籍を何冊も入れるかわりに、ロングテール的な、需要が少ないかもしれないが、様々なジャンルやテーマの書籍を増やす方が、もしかしたら、知の平等性や書籍の多様性を保てるのかもしれません。
そう考えると、図書館のあり方や、本の評価軸が変わっていくことも必要になってくるのでないかと思います。
ちきりんさんの図書館のVoicy参照↓↓
■本の評価軸・価値判断軸を増やす=いろいろな角度の本のものさしの必要性
出版社にとって、書籍とは「作品」でありながら、「商品」でもあります。
一つの指標として、「売れる」ということは、ビジネス的にも、多くの人に文化・価値・情報・学びを届けるという意味でも、とても大切なことです。
一方で、書籍に、「売れる」ことだけの指標しかなければ、書籍や出版のミライはあまり明るいものにはなりません。
書籍もたくさん売れた書籍だけに「価値があり」、売れない書籍には「価値がない」というわけではないはずです。たとえば、その本を読んだ人が、どのようにその本を血肉として生きていくのかは、なかなか見えにくいものです。もちろん、読んだ読者の採点という指標や、評価・感想というものさしはありますが、他にも、読んだ人に与えた「影響度」や「深度」、その本の内容がどれだけ多くの人に伝わったかという「伝播度」など、いろいろな指標が生まれることで、書籍の「価値」も多面的に見られるようになるのではないでしょうか。
このように、本の価値についての「視点・ものさし・指標」をいろいろな角度からとらえて、なんとか数値化できるようにしていくことができれば、その価値が立体的に見えてきて、図書館の話で言えば、貸出数以外の価値を見つけていくことも、より可能になってくるのではないかと思います。
■本を読む前後の「体験」を提供する場
また、全国的に、書店さんの数が減ってきている(全盛期から比べると半減以下です)ことを考えると、書店さんが別のものさしを持って、価値を提供できるような場になることで、書店さんの減少の流れを止めていけるようになるのかもしれません。
その一つに、書店さんとは、本を売る場所ということだけではなく、本を売る前後の「体験」を提供する場になっていくということがあると思います。
たとえば、書店というスペースを、本以外に、様々なものも売る場にして、書店での体験価値を増やすことに成功している例の一つが、蔦屋書店さんです。
代官山の蔦屋書店にはスターバックスが併設されていたり、椅子や机も多く設置され、文具や小物も販売されたりしています。スターバックスが併設されているのは、「本だけではなく、飲み物も提供する」ということではなく、「珈琲を飲みながら本と触れ合う場を提供する」という目的からなのだそうです。
蔦屋書店の対象は、空間づくりを見ても、15歳以上の大人が中心なのだろうと感じます。一方で、クレヨンハウスさんは、「書店を超える」を夢見て、運営されてきた会社です。ここでは、主に子どもの本の専門店とおもちゃの専門店、オーガニックレストランというスペースを提供しています。また様々な体験型のイベント、たとえば「味噌づくり」や「コットン体験」も行ったりしています。
クレヨンハウスさんも、体験を提供しつつ、「本も売る」場所の成功例なのだと思います。
■旅する本屋
このような特徴的な本屋さんを地域で展開していくのが難しい場合、たとえば、「旅する本屋」というコンセプトで、「空き家が増えている」この時代に、空き家の有効活用として、レベニューシェアなどの初期費用がかからない形や、様々な業種とコラボする形で、1週間だけ、そこに滞在して、どんどん移動していく本屋さんなどのような形態があっても面白いかもしれません。
現状では、移動コスト等がかかりそうに思いますが、AIやテクノロジーの進化に伴って、より早く安く移動ができる仕組みや手段ができるミライが来れば、様々な面白い試みやサービスが実現できる可能性も、大いにありそうです。
今回は「BOOK OFF、図書館、地域の書店さんの新たな指標価値」から、本を売るだけにとどまらないで、体験を提供するスペースとしての本屋さん、そして、新たな可能性を持った「旅する本屋」についてまで、考えてみました。
テクノロジーの進化と、人が求めるコンテンツの進化、この両軸を見ながら出版のミライについて、今後も考えていきたいと思います。