物事の全体像を見えている人は、仕事ができるなと感じることが多いです。それは、それぞれの事象の影響力を考えているから、一般的には「関係ない」と思われている部分を大事にし、結果を出すからでしょう。今回はその視点にさらに時間軸を加えて考えてみたいと思います。
目次
■CROSS VIEW「未来から考える」
“未来から考える”ということについて、『子育てスイッチ』の著者・かわべけんじ先生と、『オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者であり、ラグビーのコーチを教えるコーチをしている中竹竜二さんの視点と絵本作家の西野亮廣さん、3者の視点を掛け合わせて、クロスビューしていきます。
1、未来から考えると、わかること
中竹さんは、「未来の自分に会いに行って考えてみる」という方法を提唱しています。
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
私は挫折や逆境に出会うと、「この挫折・逆境があるからこそ」と思うようにしています。今はつらいけれども、どこかで振り返ったときに、「ああ、あの経験があったからこそ今の成功があるんだ」と思えるようにしたいのです。そのためには、心のタイムマシンに乗って、成功している未来の自分に会ってくることがもっとも有効です。挑戦したあと再び挫折してへこんでいる未来の自分ではなく、挑戦した結果、それを乗り越えて成功している未来の自分に会いに行くのです。
それは決して難しいことではありません。その未来の自分とたくさん会話をします。成功するために具体的にどんなことをやったのか、どんなことに気をつけたのか、誰と頑張ったのか―― そんなことをできる限り質問してみてください。要するに、未来の自分に現在の自分がインタビューをするわけです。そうすると、必ず未来の自分が答えてくれるフレーズがあります。
「あのときの挫折・逆境があったからこそ今の成功がある」
今まさに直面している苦境のおかげで成功したんだというストーリーを、未来の自分に語ってもらうのです。わが子がもし何かに挑戦して挫折をしてしまったら、挫折したからこそ会える未来の自分に会いに行き、たくさん会話をしてくるようにアドバイスしてみてください。
その答えの多くは、すでに自分の中にあるはずです。そして、なんだかんだと理由をつけてやらなかったことだと思うのです。自分の外側に理由を求めている限り、人は決して成功はできないし、成長もしません。未来の自分がそのことを教えてくれることでしょう。
成功した未来の自分だけではなく、失敗した未来の自分も大切なことを教えてくれることがあります。失敗した未来の自分は、「やっぱりあのときに思い切ってやっていればよかった」と言うのです。
私は6歳からラグビーをやっています。数え切れないくらいの感動や喜びがありました。でも一番鮮明に覚えているのは、やはり悔しい思いをしたときのことです。
どんな試合であれ、負けたときの悔しさはこの上ないものです。そんな負けて味わう悔しさでも、ある程度受け入れられるものとそうでないものがあります。
たとえば、「今回は相手が本当に強かったので、今の自分たちの力ではどうしようもないなあ」と潔く負けを認めて受け入れるパターンがある。その試合で自分たちは力をすべて出しきりベストを尽くした。けれども敗戦してしまった、という負けです。
一方、自分たちの力を少しも発揮できずに負けてしまった試合というのもあります。なんとも表現しがたいのですが、とにかく思い出すたびにとても悔しい。振り返ってみると、その原因は試合の勝ち負けに関係なく、失敗することを恐れて自分自身が理想とするプレーに挑戦しなかったことだったりするのです。普段なら目の前に敵がいても思い切って突っ走るのに、その試合に限ってはなぜか弱気になってパスをしてしまい、結局ミスをしてしまった……などです。
失敗した未来の自分が教えてくれること。それは、チャレンジしないことがもっとも大きな後悔を生むということです。失敗した未来をイメージすることも、ときには必要になるでしょう。
『オフ・ザ・フィールドの子育て』中竹竜二著より
今、目の前で起こっている失敗、挫折、逆境に対して、未来の自分が「あの時のこの失敗があったから、今がある」と声をかけてくれることは、どんなに勇気が出ることでしょうか。
イメージができたら、あとはそのようなシナリオだったと考え、進んでいくだけです。「未来に行って、自分自身に、今の状況はどのようなシナリオの一つなのか聞いてみる」、未来から考えることが、勇気へと繋がっていきます。
2、未来からいまを見て、子育ての「いま」を変える
未来歯科のかわべけんじ先生は、「未来からの子育て」という考え方を提唱されています。
―未来歯科 川邉研次(Kawabe Kenji)
かわべ先生は、37年間に渡り、「予防」をしながら、子どもたちが大人になるまでを、ずっと見続けてきました。その結果、どのような育ち(親や環境)をした子が、どんな成長(心や体)をし、どんな大人になって、どんな職業に就いたのかまでを見届けることができたそうです。
かわべ先生が院長の「未来歯科」の理念は、一時的な治療ではなく、「予防」という観点からでの、子どもたち・大人とのお付き合いなので、このようなことが可能になるのだそうです。
予防とは「未来から今を見る」ということです。
「未来から今へ」という「真逆」の方向から見るからこそ、その子の「これから」を予測することができるのです。
それがまさに、子育て”スイッチ”です。逆さまから考える、未来から考えて子育てをするということで、『子育てスイッチ』という本を書いています。
「子育てスイッチ」かわべけんじ著
かわべ先生は、「子育てスイッチ」の中で(スイッチ88)、「自分のことを『この子の未来』だと考えて、大事にしましょう」というメッセージを書かれています。
自分の姿が、「わが子の未来だ」と考えてみると、親である自分が元気になることが、とても重要だとわかるでしょうし、幸せな未来を示す”子育て”にもなっていることが、腑に落ちてくるのではないでしょうか。
子育てを”未来から”考えて、”いま”を変えていく視点は、まさに”スイッチ”なのだと思います。
3、絵本の未来から考える絵本作家
お笑い芸人をやったり、絵本作家をしたり、オンラインサロンを運営したりしている西野亮廣さん。
西野さんが最初に出版した絵本は『えんとつ町のプぺル』。こちらはネットで全ページを無料公開したことでも有名になりました。
この絵本は内容だけではなく、作り方が面白いのです。
最初に、絵本の個展が開かれること、ミュージカルになることから逆算して(繋げて)、この絵本は作られているのです。
また、『えんとつ町のプぺル』の制作秘話・戦略を綴ったビジネス書『魔法のコンパス』を直前に発売。20代男性という、ある意味、一番、絵本を読むことから遠い層に向けて、この絵本を読んでみようと思うきっかけを作ったそうです。
結果、特に新人作家にとって、絵本はなかなか売れるのが難しいというジャンルの中で、『えんとつ町のプぺル』は40万部のベストセラーになっています。
「絵本が出来上がった後に、その作品がどう羽ばたいていくのか」といった未来から考えていく発想と戦略は、本づくり・作品づくりなどにおいて、大事なポイントだなと思います。
(まとめ)
未来から考えることは、
・勇気が出る
・ストーリーの一部として考えることができる
・予防の視点ができる
・実際に背中を見せることにもつながる
・辿り着く先を明確にできる
…etc
近視眼的になってしまいがちな視野を、広げて俯瞰するために、大切なことの一つになるのではないかと思います。
▽【出版のミライ④】分断しないで考える~繋がりで広がるミライ
【参考著者】
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。
2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。
◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。
教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。
改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。
“サンドウィッチマン推薦! ”
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」
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―未来歯科 川邉研次(Kawabe Kenji)
1953年、愛知県半田市生まれ。歯科医師として、噛み合わせ治療や顎関節治療において、歯を削ることや抜くことに疑問を感じる。自身の交通事故による顎関節症で整体に通うなかで姿勢に着目。その後、数々の試行錯誤の末、世界初の予防歯科システム「姿勢咬合によるメソッド」を開発。削る治療から削らない治療へ、そして薬の臭いの無い歯科医院を目指し活動する。現在は、口腔内にとどまらず、全身疾患の根本的原因を捉えるトレーニング、解決を図るためのセミナーを積極的に行っている。また、20年以上の長きに渡りホワイトニングの研究・セミナーを続けており、これまでに受講した歯科医師数は、のべ1,700名以上、1,500件以上の全国の歯科医院でその技術が導入されている。著書に、「知っておきたい「最新歯科医療」」、「「身長伸ばし」5分間ダイエット」、「かわべ式 願いをかなえるハッピーノート」、「手相を描けば幸せになれる!」など多数。累計約100万部。
2020年、これまで培ってきたメソッドをまとめた『かわべ式 子育てスイッチ 〜生まれた瞬間からグングン発達する88の秘訣〜』を上梓。
◆「子育てスイッチ」の紹介◆
本書はオールカラー!そして読みやすいペタ―っと開くコデックス装。
月齢ごとに必要なメソッドを見開きでわかりやすく紹介。
抱っこの仕方やおっぱいの与え方、泣かせ方、歯が生える前の歯磨きの方法、お口ぽかんにならないための姿勢から親が元気でいるための秘訣まで。
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