育てるとは、自分が育つこと。真逆からの育成方法

親が子に対して、コーチが選手に対して、先生が生徒に対して、どう育てていくか。これは、多くの人が考えていることだと思います。教える、育てるプロの2人の主張を見ていきましょう。

■CROSS VIEW「真逆の育成方法」

「子どもを、選手を、部下を”育てる”ということ」について、『子育てスイッチ』の著者・かわべけんじ先生と、『オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者であり、ラグビーのコーチを教えるコーチをしている中竹竜二さんの視点を掛け合わせて、クロスビューしていきます。

1、監督、コーチに必要なのは、自分自身を理解し、自分自身が成長すること

中竹竜二さんは、「教える側が学ぶこと」が大切と言います。

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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私は公益財団法人日本ラグビーフットボール協会で10年間、「コーチのコーチ」であるコーチングディレクターを務めてきました。世界で勝てる指導者を発掘・育成し、ユース世代の日本代表を強化するのが仕事です。

将来、日本代表を担うユース世代を指導するコーチに対しては、「自分自身の成長に目を向けること」を大切にしてもらっています。コーチ自身の成長に目を向けてもらうには、「今が完璧じゃないと認めること」が必要になってきます。どれだけ自分が成長しているかに目を向けるには、過去の自分と今の自分とを比較しなければならず、過去の「できなかった自分」を客観的に見つめる必要があるのです。

人はつい、自分を他者と比べがちです。それだと相手のいいところばかりが気になり、逆に自分のほうが優れていると感じたとしても、自分がどれだけ成長したのなり、逆に自分のほうが優れていると感じたとしても、自分がどれだけ成長したのかを知ることにはつながりません。成長を知るには、他人ではなく、あくまでも自分の過去と現在に物差しを当てて測るしかないのです。

たとえば、何かコンプレックスを抱えているとして、そのコンプレックスが何かは、自分にはわかっています。そのコンプレックスをまずは認めた上で、それを自分がどんな方法で克服しようとしているのかを見ていくようにします。そうすれば、自分の成長がわかるようになります。

それができるコーチは、選手に対しても他者と比べるのではなく、その選手の過去と現在を比べることができます。すると、「いい結果」には興味がなくなる。成長がないのに「結果オーライ」であっても、それには意味がないとわかるからです。

たとえ結果が出なくても、「ここがこんなに成長した!」ということがわかれば、喜びや充実感を見出すことができます。結果など気にしなくても済むのです。

これを「わが子」に置き換えると、他人の子どもの点数と比べても意味がないということ。まわりの子がどれだけ運動ができようが、わが子にできなかった逆上がりが今日できるようになったことのほうが大事で、ほかの子の点数と比べて一喜一憂することより、ずっと価値があるのです。

まずは、コーチ自身が自分と真剣に向き合うこと。そうした姿勢を選手に見せればよいのです。選手だって、親(コーチ)の背中を見て育ちます。

私はコーチを育てるときに、はっきりとこう言います。

「ラグビーが詳しい、戦術を知っている、ということよりも、コーチであるあなた自身がどれだけ学ぼうとするか、いろんな現象を〝自責〟として捉え、どれだけさらけ出せるかが大切です」と。

自分自身の成長に目を向けると言っても、そこに劇的な成長なんて必要ありません。親の場合であれば、過去の自分と比べたときに、「子どもの話を長く聞けるようになった」、「ちょっと待てるようになった」、「嫌い・苦手な人にも礼儀正しく接することができるようになった」など、自身の小さな変化(成長)を見つめるだけで充分です。それができるようになれば、昨日よりも成長した今日の子どもの姿に自然と目が行くようになるでしょう。それが子どもを伸び伸びと育てることにつながると思います。

「オフ・ザ・フィールドの子育て」中竹竜二著

この件に関しては、実は、花まる学習会の高濱正伸先生も同様に述べています。

例えば、僕がした成功者へのインタビューでも、一定の割合でいたのが、「頑張っていた親」を語る方々です。

僕も、戦後の貧しい時代に中卒で准看護師となり、医師の父と結婚した母が、高校卒業の資格を取るために、家事の合間や、スクールイングで熊本市に向かう汽車の中でひたすらテキストをにらんで勉強している姿を見て、勉強って大事なんだなと染み込んだ記憶があります。

また、僕が師と仰ぐ幼児教育の大家は、良い先生とは「成長し続ける人」だとよくおっしゃっていました。20年前は分かった気になっていましたが、今一定の経験をして思い返すと、煎じ詰めた濃厚な真理を教えてくださったのだと分かります。

『花まるな人生』高濱正伸著

2、子育ては、親が元気になること

『かわべ式 子育てスイッチ』の著者・かわべけんじ先生は、

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「子育ては親育て 親が元気になること」と述べています。また、「子育ての問題は子どもの問題ではない」とも言っています。(「子育てスイッチ」スイッチ30)

悩んでいるのは親であって、言葉がない世界を生きている赤ちゃんや、子どもは悩んでいません。親が勝手に悩まない。悩むくらいなら、自分が幸せになる。子どもの発達のためのトレーニングを応援してあげる。

『子育てスイッチ』かわべけんじ著

―未来歯科 川邉研次(Kawabe Kenji)

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また、かわべ先生は、子育てを子どもだけに絞らず、「子育て=笑顔育て、家族の絆育て」と繋げて考えます。

子育ての問題を子どもの問題だとはとらえずに、親育て、そして社会を育てるという方向性に変えたら、「子育て=笑顔育て、家族の絆育て」なのだということに進化していきました。私には、子どもたちや赤ちゃんの健康で笑顔あふれる無限の可能性に充ちた未来と、歯科医療からはじまる日本の医療
の大いなる未来が見えるのです。

『子育てスイッチ』かわべけんじ著

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上記のメッセージのように(「子育てスイッチ」スイッチ88)、親が幸せな自分のことを、「わが子の未来」と考えてみると、「子育ては親育て」という意味を理解していくことができます。

ちなみに、書籍タイトルに使われている「スイッチ」という言葉には、いろいろな思いが込められています。その一つに、「反対にする、逆さまにする」という意味があります。つまり、子育てを逆さまから考えてみると、親が元気になることこそが子育ての一歩になるということです。

(まとめ)

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人を育てるということは、人が育つ土壌をつくるということ。人は育てるものではなく、(自分で)育つもの。

そのための環境をいかにつくるかということが大切なのです。

1、育てようとするのではなく、まずは自分が成長して見せる。

2、子どもに笑顔になってほしいなら、自分が笑顔になってみる。

【参考著者】

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。

著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。

◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。

教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。

さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。

改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。

“サンドウィッチマン推薦! ”

ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。
「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」

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―未来歯科 川邉研次(Kawabe Kenji)

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1953年、愛知県半田市生まれ。歯科医師として、噛み合わせ治療や顎関節治療において、歯を削ることや抜くことに疑問を感じる。自身の交通事故による顎関節症で整体に通うなかで姿勢に着目。その後、数々の試行錯誤の末、世界初の予防歯科システム「姿勢咬合によるメソッド」を開発。削る治療から削らない治療へ、そして薬の臭いの無い歯科医院を目指し活動する。現在は、口腔内にとどまらず、全身疾患の根本的原因を捉えるトレーニング、解決を図るためのセミナーを積極的に行っている。また、20年以上の長きに渡りホワイトニングの研究・セミナーを続けており、これまでに受講した歯科医師数は、のべ1,700名以上、1,500件以上の全国の歯科医院でその技術が導入されている。著書に、「知っておきたい「最新歯科医療」」、「「身長伸ばし」5分間ダイエット」、「かわべ式 願いをかなえるハッピーノート」、「手相を描けば幸せになれる!」など多数。累計約100万部。

2020年、これまで培ってきたメソッドをまとめた『かわべ式 子育てスイッチ 〜生まれた瞬間からグングン発達する88の秘訣〜』を上梓。

◆子育てスイッチの紹介◆

本書はオールカラー!そして読みやすいペタ―っと開くコデックス装。

月齢ごとに必要なメソッドを見開きでわかりやすく紹介。

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㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

(株)エッセンシャル出版社
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