「自分らしさ」を大事に、「自分らしさを活かした働き方」をした方がパフォーマンスが上がると言われていますが、一方で、環境がそれを許さないということも多くあり、一部の人だけができることなのだろうと、多くの人は諦めてしまいがちです。
■CROSS VIEW「自分らしい働き方」
「自分らしさとは何か?」「自分らしい働き方とは何か?」というテーマについて、『オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者であり、ラグビーのコーチのコーチをしている中竹竜二さんと、『多様な自分を生きる働き方』の著者であり、複業エバンジェリストの中村龍太さんの視点を掛け合わせて、”自分らしい働き方”について、クロスビューしていきます。
■自分らしさを発揮するには、自己認識から
「自分らしさを発揮した働き方というのは、決して自分の”強み”だけを発揮した働き方ではない」と、中竹さんは言います。
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )氏
自分は何が好きで、どのような強み(凸)があって、何が嫌いで、どのような弱み(凹)があるのか。
凸凹が明確だと、チームで○をつくるときに、組むべきパートナーが見えてくると言います。その時、大切なのは、自分の凸を活かすための相手の凹、相手の凸を活かすための自分の凹だと考えられるかどうか、ということです。
そして、役職らしさに引っ張られない、自分らしさ、自分たちらしさを出した戦いをすることで、最高のパフォーマンスをすることができるのです。
■自分の中には、いろいろな自分がいる
自分の中には、実は、さまざまな自分がいます。臆病な自分もいるし、状況によっては英断する自分もいる。勉強をするのが嫌いな自分もいれば、興味を持ったテーマを徹底的に学ぶことが好きな自分もいる。
人間は、好きの前に、そもそも外から、もしかして内からも認知が難しい、様々なことに関心を持つ生物であると感じる。それは、小説家の平野啓一郎氏が、提唱し、龍太がとても共感している「分人」にも通じている。
平野氏は、『私とは何か「個人」から「分人」へ』(2012年、講談社)の中で、次のように分人を定義している。
一人の人間は、「分けられない individual」存在ではなく、複数に「分けられる dividual」存在である。だからこそ、たった1つの「本当の自分」、首尾一貫した、「ブレない」本来の自己などというものは存在しない。
人は、たくさんの関心や喜びと、人と人の相互関係の掛け算によって、一人の人間が様々な違う振る舞いをする生物だ。
「多様な自分を生きる働き方」中村龍太著より
「いくつもの自分がいるのだから、その自分をそれぞれ輝かせてあげよう!」それが、『多様な自分を生きる働き方』を提唱している中村龍太さんの考えです。
―中村龍太( Ryuta Nakamura )氏
■多様な人同士が生み出す価値こそが自然
様々なキャラクターをもった人々が、様々な場でコラボレーションすることで生み出させる多様な仕事や多様な価値。それは、まさに、自然界に存在する生態系のようだ。
分人である自分というピースには、たくさんの関心の出っ張りがあり、自分に関心がない凹みがあっていい。それらのピースが他の分人とパッ、パッ、パッと組み合わさって、信頼を確かめながら複業すればいい。さらには、分人であっても、ライフステージや環境によっては、専業という選択肢もありだ。この世界観は、1つの小さなコミュニティから大きな組織、そしては古い産業や新しい産業まで、「分人」同士の複業から織りなす生態系的社会。それが龍太の理想の複業だ。
「多様な自分を生きる働き方」中村龍太著より
複業は、何のために追い求めるのかということについて、中村龍太さんは3つの視点をお持ちなのですが、その一つに、「貢献感を得るため」というものがあります。
貢献感とは、アドラー心理学の定義では、自分軸で考える貢献としており、他人軸で考える貢献は貢献感とは言わない。例えば、人の役に立とうと頑張る、または、人の期待に応えたりすることではない。自分軸で考える貢献とは、「貢献しなければいけない」ということからの解放だ。つまり、自分が貢献していると感じていれば良いのだ。
「多様な自分を生きる働き方」中村龍太著より
人の期待ではなく自分軸で考える貢献。
ここでも、自分がどう感じるか、他人軸ではなく、自分で自分を知ることの重要性を感じます。
■自分たちでリーダーの定義を決める
中竹さんも、「他人の期待ではなく、自分らしさを考えていくなかで、自分なりのリーダーの定義を決める必要がある」と言っています。
また、「自分でリーダーらしさを考えるだけでなく、自分たちで自分たちのチームのリーダーの定義を決めることも重要」とのこと。
人は自信をなくしたり、スランプに陥ったりしたときに、自分の役割、その役割らしさに頼ることが多い。そのほうが失敗したときに、「リーダーらしくやった」という、ある意味で納得できる逃げが打てるのです。
(中略)
でも、本当に納得できるのはどちらでしょうか。「自分らしさ」という最大の武器を持って挑んでいくほうが、ストレスもプレッシャーも少なく、持てる力を最大限に発揮でき、圧倒的にゴールを達成する確率は上がります。
たとえそれがうまくいかなかったとしても、「やり切った!」という満足感が得られるのではないでしょうか。
「オフ・ザ・フィールドの子育て」中竹竜二著より
世間一般的に言う”役職らしさ”や他人が求めることをやるよりも、自分が自分らしさ全開で最大のパフォーマンスを発揮すること。
それこそが鍵なのです。
(まとめ)
副業から複業の時代になり、いくつもの仕事をするということが当たり前になっていく時代に必要な力とは何でしょうか。
1、自分の中にある多様な喜び、関心を知ること
2、自分らしさの凹凸を知ること
3、世間で定義される○○らしさに左右されず、自分らしさを出して最大のパフォーマンスをすること
この3つを意識しておくことが、複数の仕事をすることを見据えたときに、それぞれのプロジェクト、組織で活躍するための第一歩と言えるのではないかと思います。
【参考著者】
―中村龍太( Ryuta Nakamura )
1964年広島県生まれ。日本大学卒業後、1986年に日本電気入社。1997年マイクロソフトに転職し、Office365などいくつもの新規事業の立ち上げに従事。2013年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。さらに、2015年にはNKアグリの提携社員として就農。現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークスのポートフォリオワーカー。2016年「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で副業の実態を説明した複業のエバンジェリストとして活躍中。
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―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。
2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。
◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
[目次より]1章■「自分らしさ」を見つければ、可能性はずっと広がる!
人を育てるための第一歩
自分との向き合い方、振り返り方
「好き」と「得意」は分けて考える
弱さをさらけ出すことを恐れない/「自分らしさ」を見つける方法 ……ほか
2章■off the fieldで子どもを伸ばす親の6ヵ条
親が陥る間違った「期待」のかけ方とは?
成功している未来の自分に会いに行く
子どもを伸ばす親になるための6ヵ条
成長の度合いを測る方法 ……ほか
3章■自他ともに成長するための「フォロワーシップ」
全力でフォローする人がいるチームは強い!
全員がリーダーになる必要がある時代
ラグビーが多くの人に感動を与えた理由
型破りなキャプテンとともに学んだ1年 ……ほか
4章■特別対談vs.高濱正伸さん